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Charles Heath Robinson (2) - 20世紀初頭の挿絵 -

 <Charles Heath Robinson> (1870 - 1937)

 “ The Secret Garden ”(1911年)

 the secret garden 00 the secret garden 01
(William Heinemann, London, 1911)

 1911年にWilliam Heinemann社から刊行されたギフト・ブックには、オリジナルで保護用の箱がついていました。現在流通している「The Secret Garden」の古書は箱無しのものが多く、非常に珍しいかと思います。
 挿絵は口絵を含み8枚です。それぞれのカラープレートは台紙に貼り付けられ、その上にキャプション付きの保護紙がついています。

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 「The Secret Garden」(秘密の花園)は、1909年に発行されたフランシス・ホジソン・バーネットの小説です。初版ではマリア・カーク(Maria Kirk)が挿絵を描いています。現在では児童書のように扱われていますが、発刊当時はハイティーンから大人を対象にしたものでした。

 the secret garden 04
 
 カークの初版の絵も色彩豊かで見事ですが、チャールズはカークの絵とはまったく違った、抑えた水彩を生かして繊細にメアリや2人の子供、そして風景を描いています。その全体的な柔らかさはチャールズがこの小説を読む大人たちに向けて、何度も試作を重ねて描き上げたものです。

 NY Stokes Illustration by Maria Kirk
 ( New York:Storks,1909)
 
 チャールズの手がけた本は子供向けが大多数です。「秘密の花園」とパーシー・ビッシュ・シェリの詩集「センシティブ・プラント」は、彼の作品の中で大人向けに描かれた珍しいものと言えます。
 彼のプロフィールを「センシティブ・プラント」の挿絵(カラープレートとドローイング)を差し挟みながらご紹介します。

 “ The Sensitive Plant ” (1911年)

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 (William Heinemann, London, 1911)

 チャールズ・ヒース・ロビンソンは、1870年にロンドンで生まれました。彼の父は木版画家であり、祖父は1800年代中頃に急速に伸びてきた雑誌・新聞紙市場において挿絵の彫版家としてその黎明を支えました。ロビンソン一家の美術的な血統は、兄トーマス、弟ウィリアムと引き継がれ、兄弟3人それぞれが一時代を担う活躍を見せました。

 sensitive plant 02 sensitive plant 06

 チャールズは父の工房を手伝いながらハイスクールへ通い、卒業後は石版印刷の工房へ7年の契約で徒弟として入りました。働きながら夜間の美術学校へ通学し絵画を学ぶことは認められていましたが工房での仕事は多忙極まり、思うように通うことはできなかったようです。そんな中においても彼はロイヤル・アカデミーへの推薦を受け、入学を認められました。が、家計の事情から通学が困難になり、以後はほぼ独学で美術を学ぶことになります。彼は父や祖父が彫った木版の原板を見ながら、デザインに関する知識を学ぼうとしました。そんな彼に慶兆が現れます。1890年代に入って印刷に革新的な技術が登場したのです。写真製版(フォトグラビュール)です。それは今までのように原画を彫版技師がトレースし複製するのではなく、画家が描いたものをそのまま製版することができたのです。チャールズはそのフォトグラビュールの挿絵からビアズリー、クレインなどの線の造形を学び取ることに専心しました。

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 1895年、25歳の時にジョン・レーンからスティーブンソンの詩集「A Child's Garden of Verses」(London: John Lane, The Bodley Head)の挿絵を描く仕事がチャールズに回ってきました。ジョンはチャールズに指示を与えることなく自由に描かせました。それは100カットに及ぶインクでのドローイングでしたが、シンプル、かつ、斬新な構図は出版業界の注目を集めました(この本は1900年に入ってから出版元を「London, Longmans Green & Co., 」に変えて再版されています)。この成功は1899年にはロビンソン兄弟による「 Andersen's Fairy Tales」(London: J.M. Dent, 1899)の出版へと結びつきます。

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 1900年代に入ってからはフォトグラビュール、オフセットと新印刷技術の登場により、ギフトブックや児童書を中心に出版業界は隆盛を極めます。この技術革新はチャールズに恩恵を与え、彼の描くソフトな曲線と繊細な色彩、穏やかな子供たちの絵は一世を風靡しました。彼は「 Lullaby Land 」(1897)、「 Sintram and His Companions」 (1900),「Alice's Adventures in Wonderland 」(1907)、「 Grimm's Fairy Tales」 (1910)、「The Secret Garden 」(1911)と次々に豪華なギフトブックの装丁や挿絵を手掛けるようになりました。
 
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 生前の彼は倹約家で控えめな性格だったようです。彼はその収入を家族や兄弟姉妹の生活費に充て、彼自身は非常に質素な生活を送りました。そして多くの本が多色刷の絵から写真へと移り変わる中、彼の本に対する姿勢は大戦後も変わらず、写真ではなく絵画中心の、いわゆる「黄金時代の挿絵」を貫き通しました。
 家族や友人に愛されたチャールズは1937年、突然世を去ります。一説によれば心不全とも言われていますが、はっきりわかりません。享年66歳でした。

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 作家を紹介し足りない部分はありますが、これで挿絵の話は一応終わりにしておきます。仕事の整理のためにメモ代わりに始めたものが随分と長くなってしまいました。お付き合いいただきました方々に感謝申し上げるとともに、ご期待に応えられる内容ではなかったことを深くお詫び申し上げます。挿絵については、また気が向いた時に取り上げたいと思っています。
 
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