アンリエット・ウィルビーク・ル・メールは個人的に非常に好きな挿絵画家のひとりです。 初めて彼女の絵を見たのは18年前のことで、“ THE CHILDREN'S CORNER ”でした。ロンドンの古書店で見つけたスタイリッシュで洗練されたその本の挿絵は80年以上も前に描かれていたのが信じられないほどでした。柔らかなパステルカラーの挿絵は、内側の飾り枠にあわせて切り抜かれて頁に貼り付けられています。 古書店のご主人にアンリエットのこと、初版とリプリンツの違いなどを説明していただき、少し高価ではありましたが1914年の元版のものを購入しました。その時に同時に勧められたのが初版のダスト・ジャケット付きの“ GRANNIE'S LITTLE RHYME BOOK ”です。 今回はこの2冊と「くまのプーさん」の著者であるA.A.ミルンの“ A GALLERY OF CHILDREN ”を取り上げます。アンリエットのその他の本については折を見て取り上げたいと思います。
“ GRANNIE'S LITTLE RHYME BOOK ” (Augener Ltd. & David McKay. 1914)
アンリエットは両親と共にアラビアを訪れたのを境にして東洋の哲学に大きな関心を抱きます。特に謙抑的な教義を持つイスラム教に強い興味を示しました。1920年にセルース・カーケン(セルース・ケルゲン)男爵と結婚、名前を「サーイダ」と改名(“ A GALLERY OF CHILDREN ”の扉には“SAIDA”と記名しています)し、同時にスーフィー教に改宗します。以後はオランダのハーグに定住し、挿絵を描きながら、夫と共に貧困救済などの慈善活動や保育園の経営を通じて子供の情操教育に尽力しました。 1969年に77歳で逝去するまで、アンリエットはその生涯において「A Gallery of Children」(A.A.Milne)、「 A Child's Garden of Verse」( Robert Louis Stevenson)を含む14冊の本を出版しています。