Henry.H. Emmerson -19世紀末の挿絵 -

 Henry Hetherington Emmerson (1831-95)

 1888  Laing Art Gallery 1888年( Laing Art Gallery )

 あまり知名度の無いと言うか、むしろ日本では無名に近い画家かもしれません。
 画風だけを見るとグリーナウェイの真似のようにも見えますが、実は彼の方が油彩や水彩画家としては先達なのです。
 まとまった挿絵を伴う絵本は極めて少ないですが、晩年、子供用のトイブックなどを少し手がけており、それを通じて彼の挿絵に触れることができます。

 H.H.Emmersonについてご紹介します。

 HHE1882 (1882年、Laing Art Gallery) H_H_Emmerson_jh (1888年、John Hammond)

 エマーソンは1831年にイギリスのサウスシールズで生まれ、そして、ユニオン・イングリッシュ・スクールに通います。海岸にほど近かった学校に通う間、彼は海の風景を熱心に描き続けます。
 学校を卒業後、極めて短い期間ではありましたが彼はパイロットの職につきました。
 しかし、画家になることを目指した彼はニューカッスルにあるロイヤル・デザイン・スクールを受験することを決め職を去り、そして、絵画技法の勉強するためにパリへと渡りました。
 彼はアカデミックで古典的なきっちりとした絵よりも、より淡彩に近い画風を好み、それを作品に生かしました。
 美術学校を出た後も彼はパリで仕事を得て生活を続けました。現存するパリ時代の作品の大部分は田園風景と航海を題材とした水彩画です。
 イギリスに戻った後、本格的に油彩作品を手がけると共に、いくつかの挿絵本に取り組みました。
 彼は印象派に組したわけではありませんが、彼の残した肖像画は当時の型にはまらない独創的なものでした。
 
 今回は“ The May Blossom Painting Book”と“ Afternoon Tea ”をとりあげてみます。

 “ The May Blossom Painting Book”
  ( Frederick Warne and Co., 1881 )

 may blossom 00 may blossom 01

 塗り絵の歴史がどれくらいのものなのか僕は知りません。
 以前に、こども用の塗り絵はそれほど古いものでありませんが、花鳥風月画などの練習用としては宋代(960~1279年)あたりからあったようなことをうかがったことがあります。
 いつか調べてみようと思ったものの、ものぐさな性格がいつものように邪魔をして未だに調べていません。
 ですから起源については全くわかりませんが、19世紀末に多色刷石版による印刷がポピュラーになったこの時期に多くの「Painting Book」が発行されたのは知っています。
 ウォルター・クレインやコルデコットも同時期に何冊かの Painting Book を出しています。

 may blossom 02

 すべての絵にというわけではありませんが、彩色済みの見本が綴じられています。それ以外は二色刷になっています。現在のものと構成はかわっていないと言うことですね。
 現在と異なっているのは当時、多色刷石版による書籍が高価であったことです。少なくともすべての子供たちが手に取れるようなものではありませんでした。絵を描くのが好きな子供たちからみれば、憧れの一冊ということになります。

 may blossom 03 may blossom 04 may blossom 05

 今見ていると見本の石版画が非常に美しいです。贅沢というのはこういうことなのかとも思えます。塗り絵本というより画集として成立しています。
 彩色版画だけを切り取って額装すればインテリア絵画としても充分に通じます。もっとも僕は形になっているものを崩す趣味はないので、いくら古びてもこのまま保管しますけど。

 ここで多色刷石版画(クロモリトグラフ・Chromolithograph)について少し説明をしておきます。

 これは1798年にドイツで発明された版画技法です。
 石板上に油性チョークで絵を描いた後に、その版面を水に漬けると油性部分の線は水をはじきます。これに同じく油性塗料を塗ると線部分のみにインクが付着する性質を利用して、図柄を紙に転写するものです。
 この石版印刷により、画家が製版作業を直接に手がけることが可能となりました。そのことは、従来の銅版画や木版画のように彫版師にまかせるよりも原画の再現性が向上します。
 ルドゥーテなどの植物画の植物学的な正確さをより忠実に再現するのには非常に適していたのです。また木版画と異なり光沢のある画質が非常に鮮明で高級感を与えています。
 ただし、初期の石版画は色彩が強くですぎる傾向があり淡彩色には不向きな面がありました。しかし19世紀半ばに油性塗料の品質の向上により濃淡の再現性が広がり彩色本の中心となり、1850年~1900年頃に最盛期を迎えました。 

 “ Afternoon Tea ”
 ( Frederick Warne and Co. 1880, London ) 
 
 afternoon tea 1880 afternoontea00

「Afternoon Tea」は、 J.G. SowerbyとH.H. Emmerson の共著になっています。

 afternoon tea01 afternoon tea02 afternoon tea03

 George Routledge and Sons社から発行されたグリーナウェイの「Under The Window」「Marigold Gaerden」の反響は大きなものでした。
 そこで Frederick Warne社は、田園風景を得意とし、画風がグリーナウェイに近かったエマーソンに「ケイト風の絵をつけた本」の依頼をしました。
 この本は確かに販売部数を伸ばしました。ただし、それはあくまで「ケイト風(グリーナウェイ風)」に徹したことによるケイト・グリーナウェイの人気の再確認に他ならなかったのです。 

 afternoon tea04 afternoon tea06 afternoon tea07

 僕はひねくれ者ですので「売れているもの」に対して抵抗感が強く、「タイタニック」が上映している時も「人気のあるうちは絶対に見ない」と無意味に我を張った経験があります。
 この「Afternoon tea」も人気のあったグリーナウェイの模倣、二番煎じ的な本として嫌う面があり、あまり見直す機会がなかったのですが、今回、こうして手にとってみますと決してグリーナウェイに屈したものではないと思うようになりました。
 エマーソンの抒情性は画面のそこかしこに溢れていて、グリーナウェイには描けない暖かさに満ちています。
 彼はモチーフとして、一人病床で誕生日を過ごす子どもへのお見舞いや弟妹を寝かしつける姉などを幾度も取り上げています。
 寂しさを一番感じる時に温もりを与える視線こそがエマーソンの絵の優しさなのだろうと思います。
 

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