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残忍なピーターの煉獄 ( Ernest Griset )    - 19世紀末の挿絵 -

「The Purgatory of Peter The Cruel」
 (原作・James Greenwood、1868年初版) 

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 ( LONDON : GEORGE ROUTLEDGE & SON, THE BROADWAY,LUDGATE,NEW YORK:416,BROOME STREET, 1868)

 「The Purgatory of Peter The Cruel」は、転生によるピーターの受難と因果応報を描いた諷刺物語です。
 インドに向かう商船のクルーであるピーターは、弱い生き物を殺すことを好む残忍な性格の持ち主。
 彼は一匹のゴキブリを殺した後、マストから転落し死亡します。
 そして、生き物を殺した罪で地獄に落ち、彼自身がゴキブリ、蟻、カタツムリ、トカゲなどに姿を変え、人間に殺されたり、ほかの生き物に捕食されるなどの運命を辿ります。
 邦題をつけるならば「残忍なピーターの末路」と言うほうがわかりやすいかもしれません。

 さて、肝心の本のほうですが、36枚の挿絵はエッチングに手彩色が施されています。
 装丁は、赤いレザー貼りの表紙、表題は金の箔押し、側面三方に金をあしらったもので、当時の書籍としては豪華な作りになっています。
 挿絵を描いたのは、現代では忘れ去られた挿絵画家アーネスト・グリゼです。

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 アーネスト・グリゼ(Ernest Griset,1844~1907年)

 アーネスト・グリゼはブローニュ(フランス)で生まれ、1848年のナポレオン3世による革命のために財産を没収されたことから、彼がまだ幼少のうちに両親とともにイングランドに移住したと推測されています。
 グリゼはロンドンで絵画技法を学び、晩年までロンドン動物園の近くに居所をかまえ、動物や昆虫のスケッチに取り組みました。
 ウォルター・クレインはそこでよくスケッチをしているグリゼに会ったことを日記に書いています。

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 彼の描写は生物学的にも、植物学的にも極めて正確であるのみならず、昆虫や動物を擬人的に扱うことに長けていました。
 彼は動物園で動物や鳥、昆虫の観察をし研究を積み、そうして描かれた絵の多くは、現在、ビクトリア&アルバート博物館で観ることができます。
 しかし、当時の評価は彼にとって決して好意的なものばかりではなかったようです。
 1877年7月9日のThe Times誌は、彼の死の誤報を掲載するとともに「彼は非常な皮肉屋であり、動物と人間の間の子のような野蛮で怪奇な生き物の絵を無数に製作した。それは賞賛に値しない、明らかに心を病んだ者による無尽蔵な紙屑である」と書きたてました。
 The Timesの酷評にも関わらず、レスタースクエアのサフォーク通りにある書店で販売していたグリゼの絵は、廉価なこともあり好調な売れ行きを見せ、人気は高まっていきました。
 7月16日付けのThe Timesでは彼の死を訂正するとともに「彼は病んではいない」と言う記事を掲載しています。

  Griset08 Griset09 Griset10  
 
 グリゼについての当時の経歴としては特筆すべきものはあまりありません。
 というのも、彼の絵は子供に支持はされましたが、大人の間では子供ほどには広まらなかったのです。
 彼はFun誌のために数年間挿絵を描き、1867年にはトム・フッドの詩集「グロテスク」の挿絵を担当し、当時、流行であったグロテスクな動物画で人気を勝ち取っていきました。
 誤解のないように説明を付しておきますが「グロテスク」とは不気味とか、気持ちが悪いと言ったことではありません。
 元々は、唐草模様(アラベスク仕立て)の中に、人物や動物、昆虫、植物、武器などをあしらった古代ローマの文様形式を指しています。
 これを先のような意味に変えてしまったのはヴィクトリア朝時代の頽廃的なイギリス風俗であり、その騎手の片棒を担ったのはグリゼであったと言って良いでしょう。

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 彼の人気と評価は高まり、リチャード・ドイル、ジョン・テニエルなどを擁していたパンチ誌の編集長マーク・レモンがグリゼをパンチ誌に勧誘しましたが、結局は意見が合わずに5年足らず勤めた後、1869年には彼はそこを去ります。
 グリゼは以後、「Boy's Own Paper」「 The Girl's Own Annual」「Little Folks」などで活躍します。
 その人気は本国イギリスよりもアメリカでのほうが高く、特に西海岸地方を中心とし、ありとあらゆる雑誌に挿絵を提供し多忙を極めました。
 その結果、彼の仕事は粗雑になり、次第に人気も廃れていき、彼の死の時にはほとんど存在自体を忘れ去られていたと言っても良い状態でした。

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 挿絵画家としては忘れ去られたグリゼですが、彼の絵やストーリーが持つナンセンスさは「ちびくろサンボ」のヘレン・バンナーマンや「トムとジェリー」の作者であるハンナ・バーベラのカトゥーンなどにも影響を与えることになります。
 今一度、絵の表現の豊かさといった観点から見直されても良い挿絵画家ではないかと僕は思います。

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