R.Caldecott (2) - 19世紀末の挿絵 -

 “ SING A SONG FOR SIXPENCE ”

 「6ペンスの歌を歌おう」は1880年に発行された「SHIRING TOY BOOKS」シリーズのうちの一冊で、彼にとっては配本第3回6冊目の絵本であり、コルデコットの絵本でも人気のあるもののひとつでした。

 6ペンスの歌  ( GEORG ROUTELEGE AND SONS,1880年)

 発行当時の初版には表紙の上方の隅に「PRICE ONE SHIRING」と記載されています。復刻再販以降には記載がありませんので、初版との見分けの一因にもなります。

 コルデコットの絵の特徴は、クレインやグリーナウェイのように絵画的な挿絵ではなく、その柔らかな動作をとらえた漫画的な傾向にあったと思います。
 オーバーアクションにもとれるユーモラスで流れるように描かれた動きは、後の絵本の挿絵に大きく影響を与えました。
 19世紀末の挿絵が陰と陽に分けられるのであれば、ビアズリーやハウスマンは陰に近く、クレイン、グリーナウェイは陽の側に位置し、コルデコットはその陽の部分を代表する画家であるでしょう。
 子供向けの本が多かったためではありますが、彼は金銭的にはさほど儲からなかったTOY BOOKの挿絵を純粋に楽しんでいたようです。
 その遊び心が動きのある挿絵を生み出したと言えるかもしれません。

 6ペンスの歌 1 6ペンスの歌 2

 彼の得意とする動きをとらえた挿絵の特徴はこの本ではそれほど顕著ではありませんが、明るい画風の魅力の一端はうかがえると思います。

 6ペンスの歌 3 6ペンスの歌 4 6ペンスの歌 5

 コルデコットも前記の挿絵画家と同じく「ラファエル前派」の画家との交流があり、影響は多分に受けていたと思いますが、実際の描かれた挿絵に関してクレイン等と比較するとその影響は見受けられません。彼らが持つ神秘さには欠けています。
 クレイン、グリーナウェイもTOY BOOKを手がけています。そこでも彼ららしさというか、一抹の不思議さを絵の中に湛えています。
 端的に言えば、コルデコットの絵は単純でわかりやすいということなのでしょう。
 子供向けの本としては最も重要な要素ではありますが、大人の目から見ると物足りなさがあるのでしょうか。それが日本で彼の名を埋もれさせている原因となっているのかもしれません。

 RIDE A COCK HORSE TO BANBURY CROSS RIDE A COCK HORSE TO BANBURY CROSS(1884年)

 刊記について

 コルデコットの絵本ですが欧米では没後から現在に渡って何度も復刻されています。
 そこで絵本コレクターを悩ませるのは、彼の本には刊行年(刊記)が記載されていないことです。
 初期のものはペーパーバックで、復刻したものはハードカバーのような違いもみられますが、そればかりでは判別できません。
 先ほど「PRICE ONE SHIRING」の表記について述べましたが、それも記載されていない初期のものもありますので、刊行年を見分けるヒントを少し紹介します。

 裏表紙に注目していただくことになります。

 John Gilpin Backcover 1878 John Gilpin (1878年) 6ペンスの歌 6 6ペンスの歌(1880年)

 1878~79年の裏表紙には「SHIRING TOY BOOKS」のリストが刷られています。
 1880年からは、コルデコットの絵本の紹介がされるようになってきます。
 出版社はいずれも「GEORG ROUTELEGE AND SONS」です。

 1882~1885年頃までは、コルコデットの絵本が価格別(シリーズ別)で段に区切って紹介され、印刷所の表示は「EDMUND EVANS,ENGRAVER AND PRINTER,RACQUET CORT.FLEET STREET」です。

 1883年からは欄外下方の印刷所表記が「EDMUND EVANS,ENGRAVER AND PRINTER,RACQUET CORT.FLEET STREET.EC」に改められています。

 The Fox jumps over the Parson's Gate (裏) 1883年 Milkmaid Milkmaid (1917年) 

 1895年頃に発行が「Frederick Warne」に移りますが、移譲された正確な年ははっきりしていません。

 表表紙に社名が表記され、裏表紙にも「Frederick Warne & Co.」の名前が印刷されます。年代判別のキーは出版社ではなく裏面の印刷所の表記にあります。
 1906~1913年までは欄外記載の印刷所表示が「PRINTED AND COPYRIGHTED By EDMUND EVANS.LTD.,THE RACQUET CORT PRESS,LONDON,S.E.」です。
 1914~1917年は「PRINTED AND COPYRIGHTED By EDMUND EVANS.LTD.,ROSE PLACE,GLOBE ROAD,LONDON E」
 1917~1939年までは「PRINTED AND COPYRIGHTED By EDMUND EVANS.LTD.,ROSE PLACE,GLOBE ROAD,LONDON E1」
 1940年代は「ENGRAVED AND PRINTED BY EDMUND EVANS.LTD.,154 CLERKENWELL ROAD,LONDON,E.C.1」
 1950年以後はPRINTED IN GREATBRITAIN.COPYRIGHT EDMUND EVANS LTD.,LONDON」となります。 
 
 Frederick Warne社についてちょっと付け加えておきます。
 社主であるフレデリック・ウォーンはビアトリクス・ポターの婚約者でした。しかし、彼は結婚前に37歳の若さで亡くなります(1905年)。
 その後、出版社を継いだ息子は横領罪で訴追され逃亡の後に身柄を拘束され有罪判決を受け、1917年4月に収監されます。これを契機に出版社は有限会社となり「Frederick Warn Co.LTD」と改称されることになります。
 従って「Frederick Warne CO.LTD」の表記のあるものは1917年以後に発刊されたものとなります。

 1917年 1917年 New Orchard Edition New Orchard Editions

 1988年に発行された「New Orchard Editions」の裏にはコルデコットの簡略な説明と彼の5冊の本が紹介されています。

 刊記についてはここまでにします。
 簡単に説明しましたがコルデコットやグリーナウェイなど出版社、印刷所を同じくする絵本の刊行年を判断するヒントにはなると思います。

 彼の絵本は京都書院から「コールデコット絵本名作集」と言うのが現行で出版されています。かつては福音館書店からTOY BOOKのシリーズが出ていたのですが今は目録には無いようです。

 コルデコットについては今回で終わりにしますが、近代絵本の父とも言われる彼の本をぜひ読んでみてください。

 COME LASSES AND LADS COME LASSES AND LADS 1 LESSES AND LDS
 COME LASSES AND LADS(1940年)

 An Elegy on the Glory of her Sex Mrs. Mary Blaize An Elegy on the Glory of her Sex Mrs. Mary Blaize 1 An Elegy on the Glory of her Sex Mrs. Mary Blaize 3
 An Elegy on the Glory of her Sex Mrs. Mary Blaize (1885年) 
 
 
*本が一部くすんで見えるのは、強い光による退色を避けるように照明を抑えているためです。 
 





 
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