枕元の本
病床の中で一冊の本を手に取った。それは決めて探したものではなく、たまたま手に当たった程度のもの。表紙を眺めながら僕は思った。
「二つの結婚?なんだ、生田春月か。」
別にこれと言った目当てもないし、身を起こして他の本を探すのも面倒だったのでそのまま読み進めることにした。
小説のなかに置かれた一句が心に飛び込む。
…人の世はとまれかくまれわれはわが正しき道を行かんとぞ思ふ
正しさとは何なのだろう。相対的なものではなく、絶対的な正しさを手に入れることはできるのだろうか。
賑やかな場所を好まず、酒に乱れるの嫌い、狭い書斎で本を手に取って暮らすことを願っていた春月。
著書「眞實に生きる悩み」の中に次のような言葉が綴られている。
…人間一人が世の中に立つて生きて行くといふ事は、もうそれだけでなかなか容易にならない事である。まして、少しでもごまかしのない、立派な、第一義に即した生き方をしようといふのは、私などのやうな凡人には到底望まれない事かも知れない。けれども始めから不可能の事と定めてしまつて、それを断念する事は、為したくもない事であるし、又為してはならない事であると思ふ。…
今夜、雨のあがった隙間から、生田春月の言葉が聞こえたような気がした。
「晴天のなかに星を探すようなものですよ。しかしそれは確実に輝いている。同じように、私の探す星は、私の心の濁りのなかに存在しています。」
砕かれた宝石が美しい反射をみせるように、花火が瞬時に燃え尽きるように、砕かれた心も美しいのかも知れません。そして砕かれたものは常に悲しいのです。
たぶん僕は病床になければ、春月を手に取ることはなかったか、もっと先のことであったと思います。偶然は必然が生み出す魔法の一つです。
「二つの結婚?なんだ、生田春月か。」
別にこれと言った目当てもないし、身を起こして他の本を探すのも面倒だったのでそのまま読み進めることにした。
小説のなかに置かれた一句が心に飛び込む。
…人の世はとまれかくまれわれはわが正しき道を行かんとぞ思ふ
正しさとは何なのだろう。相対的なものではなく、絶対的な正しさを手に入れることはできるのだろうか。
賑やかな場所を好まず、酒に乱れるの嫌い、狭い書斎で本を手に取って暮らすことを願っていた春月。
著書「眞實に生きる悩み」の中に次のような言葉が綴られている。
…人間一人が世の中に立つて生きて行くといふ事は、もうそれだけでなかなか容易にならない事である。まして、少しでもごまかしのない、立派な、第一義に即した生き方をしようといふのは、私などのやうな凡人には到底望まれない事かも知れない。けれども始めから不可能の事と定めてしまつて、それを断念する事は、為したくもない事であるし、又為してはならない事であると思ふ。…
今夜、雨のあがった隙間から、生田春月の言葉が聞こえたような気がした。
「晴天のなかに星を探すようなものですよ。しかしそれは確実に輝いている。同じように、私の探す星は、私の心の濁りのなかに存在しています。」
砕かれた宝石が美しい反射をみせるように、花火が瞬時に燃え尽きるように、砕かれた心も美しいのかも知れません。そして砕かれたものは常に悲しいのです。
たぶん僕は病床になければ、春月を手に取ることはなかったか、もっと先のことであったと思います。偶然は必然が生み出す魔法の一つです。
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テーマ : ひとりごと…雑記…きままに
ジャンル : 日記