困ったお願い

 少し前の話になりますが、病床に知人の息子さんが見舞いに来てくれました。
 思いがけない訪れに「今日はお母さんの代理?」と訊くと、彼は「それもありますが今日はお願い?というか、相談?があってお伺いしました」と言うのです。
 最近の子は語尾を疑問調にあげることが多いですね。最初は違和感が強く抵抗がありましたが、最近は、まあ、それもかわいいかなと思えるくらい僕も年をとりました。
 彼のお願い?相談?はこういうものでした。

 彼は中学3年で某大学の付属中学校に通っていて、受験の心配はほかに比べればしなくてよいので気が楽で、それもあってギターに熱中し、デュオを組んでいるとのこと。

 「僕たち童謡というか、民謡というか、トラディショナル・ソング風な歌を中心にやっているんです。コピーですけど。」
 「へえ、珍しいね。ブラックモアズ・ナイトみたいな感じ?日本だと、紙ふうせんみたないなのかなぁって、知らないか。」
 「いえ、知っています。相棒がCDを持っていて、どちらも借りてよく聞きます。」
 「で、僕になにを?」
 「今度のクリスマス・イヴに彼女の家でミニ・ライブを開くんです。そこでオリジナル曲をやってみたいんです。できれば子守歌みたいなメロディのやつ。」
 「すごいじゃない!いいことだと思うよ。うらやましいね。しかし、その件で僕が手伝えることはないと思うけど?」
 「曲は、僕も相棒もピアノをやってたんで作れるんです。でも、詩が書けないんです。全然、ダメダメなんです。母にも見てもらったんですけど反応は・・・。そしたら、Tさんに書いてもらえばって言われたんで、お願いしてみようかと。」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 僕は作詞家ではないし、文筆家でもありません。国語の教師でもないので添削、校正などもしませんから、全力でお断りしたところ、彼があまりにも正直な情けない表情を見せたので、こちらの心が折れました。

 「それじゃあさ、こうしよう。僕が一つ書くから、君たちもひとつずつ書いてください。僕が書いたものを改変するのでも構わないよ。原型がなくなるくらい手を加えてもいい。できればそうして欲しいけどね。」

 まだ蝉が鳴いている頃のことで、先日ようやくその約束を果たして、出来上がったものに手紙と簡単なメロディのスケッチを添えて送りました。

 繰り返し言い続けていますが、僕は自分で書くよりも人が書いたものを読むほうが好きなんですよ。ましてや詩なんて書けないし、歌詞に取り組むなんて学生時代以来のことですから三十数年ぶりになります。
 で、そんなこんなで出来上がったものが次の歌詞です。


 冬の音がする
 空に散りばめた硝子の欠片、冬の銀河、優しすぎる星たち

 風が吹き抜ける
 首をすくめ、襟を立てて、北風にやがて雪の気配
 
 私の知らないどこかの街で、失われて行くものたち
 呼びかけて、問いかけて、
 こんな終わりで良いのかと

 星の声がした

 空に張り詰めた氷面鏡
 軋んで砕け、夜に散らばる
 今、流れ星ひとつ


 街はいつも変わらず
 行き交う車、サイレンの音、遠く誰かの喚き声

 ドアの鍵を開ける
 明かり灯らぬ部屋の中で、孤独が「おかえり」と言う

 夕べの残り温めながら、思い返す一日
 良いことなんて何にもなくて、
 話し相手もないけれど
 
 服の影が揺れた

 明日のことは、まだわからないから
 もう一日生きてみようかな、と

 

 彼らがこれをどうするかはわかりません。けれど完成したものはあとで聞かせてくれるそうです。
 明日のことはわかりませんが、楽しみができたことは事実です。


 
 

 

  

 
 
 
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No title

それは楽しみですね!
ぼくも聴きたいです!
YouTubeとかにアップしてくれないかなー

冬の音、星の声、すこし浮き足だった街でしょうか
服の影、が対照的で
ゆらり、ゆれて見えました

すてきな歌詞ですね

こんにちは。

先日はご来校いただき有難うございました。文芸部の皆も喜んでいました。
この歌の「もう一日生きてみようかな」の感じ何となくわかる気がします。
出来上がった歌、ぜひ聴きたいです。宜しくお願い致します。

偕誠様

> YouTubeとかにアップしてくれないかなー

 先日、完成したものがCD-ROMで届きました。
 恥ずかしがりやなので難しいとは思いますけど、彼らの努力をほかの人たちにも聴いてもらいたい気はします。
 それ以上に、今夜が彼らにとって本番なので親心的な心配が・・・。
 
> 冬の音、星の声、すこし浮き足だった街でしょうか

 昔、飲み屋街の路地裏にアパートを借りていたことがあって、その時の印象が下地になっています。
 喚き声か、笑い声か、一瞬悩んだのですけど、実際には喚き声のほうが多かった気がしのでそうしました。

> すてきな歌詞ですね

 詩を作られていてる方の前に出せるようなものではありません。申し訳ない気がしています。
 
 偕誠さん、いつもありがとうございます。

 今日が素敵な聖夜になるとことを願っています。
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