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布浦翼「サンデイズ・チャイルド」

 サンデイズ・チャイルドという言い方が実際にあるのかは知りません。けれどあったとしたなら、それがナーサリーライムに由来しているだろうことは推測できます。

 Monday’s child is fair of face,
 Tuesday’s child is full of grace,
 Wednesday’s child is full of woe,
 Thursday’s child has far to go, 
 Friday’s child is loving and giving,
 Saturday’s child works hard for a living,
 And the child that is born on the Sabbath day.
 Is bonny and blithe, and good and gay.

 月曜日生まれの子供は器量がいい
 火曜日生まれの子供は品がいい
 水曜日生まれの子供は泣き虫で
 木曜日生まれの子供は苦労をし
 金曜日生まれの子供は愛情深くて
 土曜日生まれの子供は働き者
 日曜日に生まれた子供は、
 可愛くて、朗らかで、気立てがいい

 ここでは日曜日は「安息日」(the Sabbath day )となっています。神様からすべての祝福を受けた子供たちということなのでしょう。

 sundaysc001.jpg (講談社、昭和56年初版)

 布浦翼さんは別冊少女フレンドの昭和50年7月号に掲載された「ローランジュール」でデビューを果たしました。僕はこの作品をタイムリーに読んだのですが、その時の感想は「また新しい感じの漫画家がでてきたな」と言うものでした。

 「サンデイズ・チャイルド」ですが、別冊少女フレンドで昭和55年の10月から翌昭和56年4月号まで連載されました。原作は「キャンディ・キャンディ」を手掛けた水木杏子です。

…「サンデイズ・チャイルド・・・?」
 「生まれたときから幸運がついてまわるこどものことさ。おれたちとは身分がちがうってさ。」
 「あたしたちはちがうの?サンデイズ・チャイルドじゃ・・・ないの?」
 「おまえは自分の誕生日を知ってるか?」
 「知らない・・・スラムのゴミ箱にすてられてたんだってみんなが・・・。」
 「おれもさ、アランナ。」…

 sundaysc003.jpg
 
 不遇な環境にある者が夢を掴むためには何を犠牲にし、何を得て行くのか。物語は孤児であるふたり、ジェスとアランナを主人公として進んでゆきます。
 展開としては随所に煮詰めの甘いところが多く、登場人物も生かし切れていない気がします。
 養母であるアンナに連れられてアンダーソン家の令嬢ニコラの使用人となるエピソードから始まります。そこで生まれた境遇によって差別が存在し、理不尽な常識に曝されることで、いつか自分たちも「サンデイズ・チャイルド」なることを心に誓います。
 ふたりの姿は何となく「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラを彷彿させますが、自分が強くなることで成し遂げようとするジェスと、他人の地位を利用して富貴を得ようとするアランナの道程は対照的に描かれています。

 sundaysc002.jpg (講談社、昭和56年初版)

 物語中盤でアンダーソン家は没落するのですが、その後の「サンデイズ・チャイルド」の代表とも言えるニコラがあまりパッとしません。重要な役割を担っている割には軽く、伏線もないに等しい。もう少し描き加えて欲しかった気がします。
 ニコラの兄・エドモンドとアランナとは恋人関係となり婚約し、破産後もアランナは彼に真心を通そうとします。けれどその甲斐もなくエドモンドは非業の死を遂げるのですが、その経緯も説得力に欠けています。
 それとアンダーソン家破産のフィクサーであるシモンズですが悪役に徹し切れていないです。というより名誉欲が強く打算的で冷酷な男と言う設定なのに、お人好しにさえ見えます。それが打算を言い訳にした恋愛の形であったにしても裏が無さすぎます。
 当時の読者層を考慮してのこともあるのでしょうけど、原作が現実の厳しさを捉えていないのです。
 と、ここまで随分と批判的なことを書きましたが、この作品が嫌いなわけではありません。寧ろ少女漫画としては当時は珍しいボクサーを取り上げて、自力で這い上がる象徴として描き、そのダメージによりボクサーとしての栄光をすべてを失うと言う設定は注目に値すると思います。但し網膜剥離を原因にするのであれば、突然に視界が暗転するのではなく、飛蚊症との関連を入れていたのなら切迫感をもう少し出せたのではないかと思います。

 sundaysc004.jpg

 自分の美貌を武器に富貴を得ようとするアランナですが、その本質は非常に献身的で、真実の目標から目を逸らしている様子の描写は良く出来ています。もとより彼女は他人との比較においての幸福など望んではいなかったのですから。
 残念なのはアランナとニコラとが同じような性格に描かれていることでしょうか。どちらも献身的で優しい少女です。そのあり方が似すぎているのです。
 全編を通してみているとニコラは生粋のサンデイズ・チャイルドなのでしょう。貧困に晒されても優しさ、誠実さ、強さを併せ持つ少女なのですから。物語の経緯において過度の栄達を望まない分だけアランナよりも好感が持てます。
 サンデイズ・チャイルドとは「経済的に裕福なこどもたち」のことではないのです。

 物語はアランナとジェスが変転の果てに青い鳥を見つけるという筋書きのものです。彼らは気づいていなかっただけで「サンデイズ・チャイルド」であったのです。どこかでちょっと道を間違えてしまい遠回りしただけです。あと2回ほど連載回数があったならと悔やまれますね。 
 いずれにしろ作品の骨子は、「望むべきは他人と同じ幸福ではなく、自分の価値観のなかでの幸福」と言うことです。幸不幸は他人が決めるべきものではなく、自分自身で決めるものなのです。
 愛情が富に勝るとは言えませんが、貧困であっても不幸であると決めつけることは出来ません。冷戦状態の裕福な家庭よりかは、軽口が多く飛び出す貧しい食卓のほうが楽しいのに決まっています。

 sundaysc005.jpg

 この作品、登場人物たちの行動を見ていて「ああ、なんで?このバカ…」と思った読者は多いことでしょう。そのまどろっこしさが愛おしい感じさえします。
 今思えば、案だけ提示して原作としてのプロットなしで布浦翼さんに自由に描かせた方が良かったかもしれません。結果論を言っても何の足しにもなりませんが。 
 けれども純恋愛ストーリーを手掛けていなかった布浦さんに新境地を与えたという点では代替のない作品でした。そしてそれは水木さんの原作がなかったら描かれなかったものです。
 最後にくどいようですが、僕はこの作品、好きです。登場人物も、もの足りなさも含めて。


 
 
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