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下北沢あたりで

 君に便りをするのは久しぶりな気がします。
 何も特別なことがあったわけではありませんが、こうして書きだしたのは僕の心のどこかで君に伝えたいと言う気持ちが動いたからなのでしょう。
 10日までの長雨は各地に大きな被害を出しましたね。11日のこの日はその爪跡が僕には無関係だと言うかのように晴れ渡り、雨の名残りの匂いがする朝の風の中に微かな木犀の香りが感じられ、夏に別れ秋の扉が開かれたことを告げているかのようでした。
 下北沢にね、渋谷での仕事を終わらせてから、思い出せないほどの時間を隔てて行ってきました。本当にとても昔のことで、何年何十年前のことだったのかわかりません。
 憶えていることは、ある友人が「美味しいジェラート屋があるから食べに行こう」と言ったので足を向けたことくらいです。そのお店の名前も、下北沢のどこら辺にあったのか、味がどうだったかのかも記憶にありません。街の印象すらなかったので、初めて訪れたのと変わりないですね。

 RIMG09110449.jpg 下北沢駅

 下北沢へは無目的で行ったわけではありません。僕の蔵書票を作っていただいた長野順子さんがギャラリー・HANAで個展を開かれていて、時間ができたのでそれを見に行きたかったのです。
 毎度のことながら目的地に真っ直ぐ向かわずにちょこちょこと寄り道をしながら行きました。公平にみても寄り道のほうがいつも比重が大きいですね。

 最初に入ったのは「バロンデッセ」というカフェ・ラ・テのお店です。
 そこでアラビカのラ・テとスコーンを一個、頭の整理を兼ねて休息をとりました。
 ここは今年で4年目に入るそうです。ラ・テ・アートを前面に押し出し、ラ・テ・アート作りの体験もできます。1000円くらいなので手軽と言えば手軽ですね。珈琲2杯分です。
 お店の方に「初心者でもそんなに簡単に出来るものなのですか」と訊いたら「まあ、出来るか出来ないかは別として、こんなものと言うのを知ってもらえる程度ですよ」と笑っていました。

 RIMG09110419.jpg RIMG09110416.jpg
 
 バロンデッセを出た後は古道具屋に嵌まり込んで振り子時計を眺めたり、七月書房という古書店の店先にあった「7人のアーティストによるブックカバー展開催中」というポップに惹かれて覗きこんだりしていました。
 そういえば北口をすぐでたところにね、「健康的なジャンクフード」と書かれたフライドポテトの専門店がありました。そこも気になったのですがフライドポテトの気分ではなかったのでまた後日ということにしました。
 そうやってぶらぶらしていたらどこからか安っぽいタイコなのか、タンバリンなのか、とんとんとんとんと言うある種の懐古的な音が聴こえ、興味を覚えたのでその音を追いかけました。
 目的地からちょっと離れてしまったのですけど、まあ好奇心が勝ったと言うことです。追った先には「真夜中の駄菓子屋」と書かれたお店があり、その音の正体はクマの人形でした。
 店先のドアのところには「手芸セット」と商品名が付いたオモチャが掛けられていました。
 君も遊んだ覚えがあるかもしれません。あの頃はリリアンと呼んでいたのですが、僕はこれ得意だったんですよ。リリアンの台を使わずに指だけでシュシュとか、紐状に長く編んだものをより合せて小さな袋とか作りました。子供の頃は器用だったんです。今の僕からは想像できないでしょう?

 RIMG09110432.jpg

 音の正体を確かめて安心を勝ち取った後、ようやく目的のギャラリーへ向かいました。大分道を逸れてしまいましたけど。

 RIMG09110412.jpg GALLERY HANA

 ここで今月の23日まで「花宴狂詩曲」という長野さんの個展が開かれています。

 0089D890H82CC93FA81X_20150912024014915.jpg「華食の日々」 008BC98FE382CC92A9_201509120240129f1.jpg「極上の朝」

 個展のタイトルにあるように花をテーマにした作品が中心となっています。
 花とは不思議なもので、その美しさに安らぎを感じることもあれば、また美しいがゆえに狂気を呼び覚まされることもあります。引き継いでゆく命の喜びを教える反面、果てしない孤独をも僕たちにつきつけてきます。
 山野に野辺に庭先に咲き、床の間に置かれ、テーブルに添えられ、窓辺に揺れている花々。人が何を理由にしてこんなにも花に惹かれるのか、それを長野さんは解き明かそうと試み迷宮に踏み込んでいます。
 人を惑わせる花の色や香り、それは静かな狂詩曲なのかもしれません。

 150911_20150912024623339.jpg「紅い畔道」 nj091111211.jpg「無邪気さの陰」

 僕は「紅い畦道」というのを譲っていただきました。
 彼岸花の咲き乱れる道で、狐の面を被った少年に少女が何かを耳打ちしています。 
 少年は人ではないかもしれません。狐が姿を変えているのかも。
 そう感じつつも、実は少女の方が怪異なのかもしれないとも思うのです。
 少年にこんな耳打ちをしている気がしませんか?
 「その面を外してはいけない。人間だとばれたらお前など物の怪の餌食だ」と。
 
 ギャラリーのオーナーさんと話をしている途中で長野さんがお着きになられました。
 僕は長野さんにお会いできるのを確信していたわけではありませんが、初日なので「いらっしゃるかも」と言う期待はありました。
 事前に確認しておくべきでしたね。でもそれほど差し迫った用事があった訳ではなかったので。でもお会いできたら、先日依頼した新しい蔵書票と作っていただいた「約束の日」について幾つかのお願いがありましたので、それをお伝えしたいとは思っていたのです。
 お着きになられるのがあと10分遅かったなら僕はギャラリーを出ていました。僕は運が良かったです。
 
 ギャラリーを出たあとも寄り道をしました。ちょっとだけ遠回りをして駅に向かいました。僕にとっては初めてと変わらない街ですから、時間が許す限り歩いてみたかったのです。

 住宅街に入り「こんなとこに何もないかな」と思っていたところへ、無農薬野菜を使った農家のカフェと書かれた看板が目に留まり、「下北ファーム」というオープンカフェに入りました。
 僕はそこで甘麹ドリンクとシナモンアップルのパン、ピザを注文し、天気も好かったのでテラス席で待ちました。
 運んできてくれたご婦人を呼び止めてお店について話をお聞きしました。
 自家製パンとオーガニック野菜に拘ったカフェで、今年オープン3年目。今、糖質を抜きにしたディナーメニューを考えているところだとおっしゃっていました。
 パンは膨張剤を一切使わず、秋田から取り寄せた種麹を自家発酵させパン種に混ぜているとのことでした。そのためでしょうかパンには弾力性があり、香りもよく、こう言っては失礼でしたが「予想外」に美味しいものを見つけた気分でした。
 僕が頼んだ甘麹ドリンクはそのパンに使われている醪です。砂糖は使われていません。自然な微かな甘さです。非常にシンプルで、それを補うためにフルーツがトッピングされていました。僕としては麹本来の甘さを楽しむためにフルーツは別添えにして欲しい気がします。次に機会があればそうリクエストしてみるつもりです。
 
 RIMG09110426.jpg RIMG09110425.jpg

 オープンカフェを出てから再び商店街へと戻りました。
 大規模店舗の無い、まだ商店街が活気に溢れている頃の懐かしい感覚を思い出していました。
 幾つものショーウィンドウに立ち止まり、引き返し、脇に逸れてはまた戻ることを繰り返しながら、「N.Y.カップケーキ」と言うパティスリーのドアを押しました。

 RIMG09110441.jpg

 ウィンドウから見えるカップケーキはどれも可愛らしく美味しそうに見えたので。そこでイチゴのティラミスとコーヒーのカップケーキを1個ずつ買いました。

 RIMG9110438.jpg nyc091102115.jpg
 
  小さなケーキを入れた箱を手にした僕は、道了大薩埵を守本尊の秘仏とする真龍寺の前を通り駅に向かいました。
 妙覚道了は室町時代の人で、神奈川の大雄山(最乗寺)開創に当っていた了庵禅師のもとに空を飛んで馳せ参じこの事業を完遂し、了庵禅師が遷化(應永18年3月27日)した後は「山中にあって大雄山を護り多くの人々を利済する」と五大誓願文を唱えて天狗に姿を変え、火焔を背負い右手に拄杖、左手に綱を持ち白狐の背に立って山中に身を隠したという伝説があります。
 その真龍寺脇に小さなお稲荷さんがあります。僕は狐にはお世話になっている気がするので見かけると手を合わせるか、お参りをすることを欠かさないんですよ。
 そういえば君は僕のそんな姿を見て「信心深いわけでもないのに不思議なことをするわね」と笑ったことがありましたね。
 まあ、君の言う通りです。僕にも本当のところ理由など明確ではないのです。習慣なのか、義理なのか、それとも強迫観念なのか、はっきりしません。
 僕がだいぶ以前に狐を飼っていたせいかもしれないですね。ヴェリファと言う名のシルバーフォックスでした。

 随分ととりとめもないことを書いてしまいましたね。
 読む側の気持ちも考えずにすみませんでした。
 このあたりで終わらせます。
 また何かあったら便りを書きます。

 それでは失礼しますね。

 追伸、
 長野さんの個展の案内を添えておきます。

 長野順子銅版画個展「花宴狂詩曲」
 会期:9月11日~23日(17日休廊)
 会場:GALLERY HANA
    東京都世田谷区北沢3-26-2
    TEL. 03-6380-5687
 

 



 

 
 
 
 
 
 
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