或る阿呆の一日~押上、曳舟、向島あたり

 中野を出て浅草橋で仕事を済ませてから押上に向かいました。
 もう絶対に足を向けないつもりだったのですが、ちょっとした出来事から気分の変化があって降りてみる気になったのです。
 いやしかし再開発の波というのはすごいものですね。街が変わり過ぎてしまって市街案内図を見なければ自分が住んでいた町の方向すらわからなくなっていました。
 地図で現在地と目的地、それからおおまかな道路を確認してから歩きだしました。ここから曳舟をまわって向島まで行くのですが、行けども行けども見覚えのあるものがありません。辛うじて昔からある町医者の看板を目にしてほっとする始末です。
 まあ仕事も済ませたわけですから慌てず、迷子になりながら歩いてみようと、コンパクト・カメラを片手にふらりふらり。とりあえず目指すのは京成曳舟駅と水戸街道です。
 ↓途中でみつけた手作り雑貨屋さんの前にあったお人形です。民家を改造した手作り感満載のアクサリー店。掌に載る小さな雑貨は見ていて飽きないですね。作るのが好きな人だったら時間を忘れてしまうんでしょう。
 
 0150807.jpg
 手作り雑貨ギャラリー・coneru
 墨田区押上1-29-9. TEL:03-3626-5360

 途中、ローソンがあったので別府葉子さんのコンサートチケットのことを思い出し、購入。
 秋の東京定期公演です。春は体調不良でいかれなかったので今回は頑張って聴きに行くつもりです。

 04[1]
 
 別府葉子シャンソンコンサート
 2015年9月4日(金) ルーテル市ヶ谷ホール

 015817RIMG0194.jpg

 京成曳舟駅手前で見かけた再開発で取り壊し中の雑居アパートに入っていたクリーニング屋の煙突です。建物の背後は既に壊され、ここもほどなくして解体されるでしょう。

 そういえばね、地名が変わってしまっていたんですよ。寺島という地名が東向島になっていて、それがすごく広い。その他にも細かい地名が無くなってしまって。ですから地名を見ても記憶と整合しないんです。
 救いは学校名が変わっていなかったことでしょうか。第一寺島小学校とか墨田川高校とか。
 もう他界しましたが僕の叔母は七高(墨高)が共学になった時の一期生なんですよ。それまでは男子校だったから。僕と違って優秀な叔母でした。
 水戸街道にでて地蔵坂商店街の看板をみつけ、そこを浅草方面に戻る形で行ったところで「肉のカリヤ」の看板に出会いました。
 ここの息子さん、僕が小学生の時に通っていた塾の先生でした。大学生のアルバイトで来ていたんです。地元が近いと言うこともあり、縁日ごとに寄らせていただき揚げたてのコロッケをご馳走になったことなど思い出されます。
 今は一番末の弟さんがお店を引き継いでいました。
 生憎とまだ揚げ物の時間には早くて食べることはできませんでしたけど、昔のことをあれこれと立ち話。
 それによると地蔵坂の縁日はもう開かれていないこと、白髭神社の植木市もすっかり聞かなくなってしまったこと、個人商店も姿を消して行き、賑わいが影をひそめてしまったことなど。
 地域コミュニティの役割からすると商店街はとても重要なのですけど残念です。人とのつながりよりも買い物のしやすさを選んでしまうのでしょうね。
 「昔はね、親がこどもを連れて買い物にきていたでしょ。だからどこの子か覚えられたし、お祭りとかあれば面倒も見られたですよね。けれど今は塾とか習い事とかで一緒に連れてること少ないですから顔がわからない。だから何かあっても声をかけることもできないですよ。」
 それは恐らく「かくれんぼ」や「影踏み」を知らないこどもたち、ひとり暮らしの老人、隣人の顔をみずに暮らすアパートの人々といった現代的世間の根でもあるのかもしれませんね。

 0150817.jpg
 肉のカリヤ 墨田区東向島1-33-9

 思った以上に長話になってしまった「肉のカリヤ」さんを後にして更に向島方面へ。渡った国道六号をもう一度反対側にまわって「鳩のまち」の看板を眺めながら秋葉神社へ。

 015817RIMG0204.jpg

 「こんなに小さな神社だったかな」と思いつつ縁起に目をやれば、誰が書きいれたのか説明文に訂正が入っていました。
 漢字がね、間違っているんですよ。小学生並。
 「初め」であるところが「始め」になってる。しかも全部です。その字の横にすべて鉛筆でダメ出しが入っているんです。
 「これを作った方、校正を真面目にやらなかったでしょう?おざなりに読み飛ばすとこういうミスがでるんですよ」と胸の裡で呟く。
 それは自分に言い聞かせている気もしましたが…。

 015817RIMG0211.jpg 0150817RIMG0218.jpg

 かつての友人の家があったあたりを訪ね歩きましたが確信が持てるものはほとんどありませんでした。多くが集合住宅や雑居ビルになってしまっていて。
 歩き疲れてもきたので「鳩のまち」を通り抜けて帰ろうと思い、本所高校前から言問小学校を通り商店街へ。
 角にあったパチンコ屋も、本屋も、レコード店もなくなってしまったし、級友がやっていた洋品店もない。レコード屋さんは当時では珍しい新品サンプル盤なども扱っていて通常より安く売っていたんですよ。
 町会会館の近くにあった、子供会で音頭をとっていた牛乳屋さんも見当たりません。そこのご主人にはベーゴマのまわし方を教わったり、一緒に夏休みのラジオ体操をしたり、お神輿を担いだりもしたのですけど。

  0150817RIMG0234.jpg   0150817RIMG0242.jpg

 この辺りはかつては文士も数多く住んでいたんです。吉川英二、佐多稲子、幸田露伴など。その旧居自体は残ってはいませんが説明する看板が立てられています。寺社、公園には文学碑や歌碑もあります。
 仲間内の新年恒例行事だった隅田川七福神めぐりもありますしね。各お寺や神社へ色紙を持って周るのが好きでした。
 僕は今回はそういったものを周る気はありませんでしたが、文学めぐりの地図などもあるようです。
 「鳩のまち」にしても終戦直後は赤線と呼ばれた地域で、附近には娼館も見受けられました。待合茶屋やお茶漬け屋なども隠れ商売をしていたようです。今はそんな痕跡はありませんが。
 そんなことを振り返りながら道を辿ってゆけば、夏の陽が長いとはいえ時間が暮れればそれなりですし、足も痛くなってきました。仕事を終えてからこれまで一度も坐っていなかったことを思い出し、商店街にある珈琲店に入ることに。
 そこはかつて昭和初期に薬屋であったところを喫茶店に生かして使っていました。薬棚や抽斗もそのままです。

 置かれているアデカ石鹸の台は珍しいと思います。
 アデカは大正6年に創業した旭電化工業が昭和22年に新規事業としてスタートさせた化学品部門のブランド銘。親会社の頭の文字をとってつけられています。
 今は古河グループの一企業となり、界面活性剤やプロピレングリコール類等の有機製品の開発から販売までを手掛けています。
 薬戸棚も大変に古いもので大正末に作られたものです。抽斗取っ手金具が2か所ほど代替品になっていますがその他はオリジナルを留めています。

 0150817RIMG0227.jpg 0150817RIMG0228.jpg

 ご主人に伺うと開店は九年ほど前。
 引き継いだ当時、店舗は薬屋としては長らく使われていず、埃だらけで掃除にも一苦労したとのこと。
 店内に入り振り返ると、潜ってきた入口には「化粧品 クスリ」という表構えのガラス書きに気づくでしょう。
 飾り棚は薬屋当時の商品棚を手を加えずにそのままにしてあり、「こぐま」さんで使用されているカップなどが販売用に並べられ、ショーケースには日本初の栄養ドリンク「リポビタン液」のアンプルなどが展示されていますので面白いです。
 置かれているテーブルは普通のものではなく小学校などで使われている児童机。
 その理由を聞きましたらご主人のお父さまが学習塾を経営なさっており、丁度、喫茶店の開店時期にその塾を閉鎖したので机などを貰い受け利用なさったとのことでした。

 0150817RIMG0206.jpg

 古民家カフェ 「こぐま」
 墨田区東向島1-23-14 ℡ 03-3610-0675

 僕はそこで紅茶のシフォンケーキとこぐまブレンドをいただき、今日一日の疲れをほんの少しだけ落としました。

 0150817RIMG0224.jpg

 最後は「無意味」と思いながらも街道沿いにある「信寿司」に入りました。
 上寿司を頼み、握ってもらっている時に「このあたりでIさんという人がやっていたお寿司屋さんに覚えがありませんか?」と切り出しました。
 ご主人は手を止めてしばらく考え込みながら「うちは昭和56年からやっているけど覚えがありませんね。裏の方にIさんという仕出し屋があったことはありましたけど」と。
 それは僕が探しているものとは違うだろうと言う確信が過りました。
 お寿司は美味しかったです。1600円という値段も手ごろでしたし。今度は食べるために伺いたいと思います。

 信寿司 
 墨田区向島4-8-11 ℡ 03-3622-6787

 さて今日をほぼ歩きつくしました。まだ訪ねたいところはあるけれどお終いにしなければなりません。程よい疲労感と、歩き過ぎた踵の痛みが、僕の一致しない思い出と現実を表しているよう。
 でも行程はこれで終わりではないんですよね。帰宅しなくてはなりませんから。
 「足が痛い・・・」と文句を言いながら、再び京成曳舟駅へと引き返した僕でした。

 思い返せば歩き回って、食べているだけの一日みたいな感じ。
 何をするために歩いたのだか理由もわからない一日。
 けれどこの一日は無駄な時間ではなかったと、どこかで思えるのが不思議でした。

  0150817RIMG0246.jpg  0150817RIMG0248.jpg

 ↓残っている力を振り絞って作ったロールケーキ。ただし生クリームが足らずに中身が少な目になってしまいました。

 01700RIMG0160.jpg
 

 

 
   

 

 

 

 

 

 
スポンサーサイト

テーマ : ひとりごと…雑記…きままに
ジャンル : 日記

コメントの投稿

非公開コメント

sidetitleプロフィールsidetitle

otosimono

Author:otosimono
全く役に立たない独り言です。

sidetitle最新記事sidetitle
sidetitle最新コメントsidetitle
sidetitle最新トラックバックsidetitle
sidetitle月別アーカイブsidetitle
sidetitleカテゴリsidetitle
sidetitleFC2カウンターsidetitle
sidetitleカレンダーsidetitle
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
sidetitle検索フォームsidetitle
sidetitleRSSリンクの表示sidetitle
sidetitleリンクsidetitle
sidetitleブロとも申請フォームsidetitle

この人とブロともになる

sidetitleQRコードsidetitle
QR