潮流

 お変わりありませんか。
 今日も好天に恵まれましたね。
 陽射しを恋しがっていた分を取り返そうかとするように気温はぐんぐん上昇しました。
 君は一日、どんなことをしていましたか。
 仕事ですか。
 学校ですか。
 お昼休みにはどんなものを食べましたか。
 電車のなかでは何を読んでいましたか。

 一日の流れの中にも、一生のある時期にも、潮流というのが存在します。
 それは、どうしてこうなってしまったのかと嘆く結末をもたらし、時にはサクセスストーリーを作り出します。
 その流れには渓流が海へ注ぐように抗えない力があります。
 けれども行き着く先は選べないとしても、その潮の流れを選んだのは紛れもない自分なのです。
 「すべてはなるべくしてなっている。」
 偶然を必然に結びつけるために思考が存在しているように、潮流によってもたらされる結果には常に意思があるのです。
 最初の意思によって選ばれた何かが加速してゆくのです。
 君が以前言っていたように、加速は飛び立つ時、上昇する時に働くばかりではありません。
 落ちて行く時にも等しく働いているのです。
 その終りが安定であるか、衝突であるかの違いだけです。
 そしてその加速は自分では止めることが、緩めることができない。
 だから僕は流れ着いてしまった場所で考えるんです。
 「これで正しかったのか?」って。

 高校1年の時、国語の教科書の裏見返しにこんな落書きをしたことがあります。

 正午までは
 まだ
 間があると言うのに
 もう午後の日差し
 ああ
 僕の道標が
 倒れ かけている

 僕は自分の落日をその時にすでに感じ、現在への潮流を選択してしまっていたのでしょう。
 この稚拙な数行は以後も僕のなかに居座り続けました。
 警告として。
 僕がそれに気づかないふりをしていただけで。
 
 すみません。
 君にこんな話をするつもりではなかったのです。
 もっと面白可笑しい話を書くつもりだったのです。
 たとえば、初めて女の子と二人で喫茶店に入った時のこと。
 僕は気取って飲めないコーヒーを「ブレンド1つ」とたのみ、大人びた彼女は「アメリカン」と手短に言った。
 「ここのコーヒーっておいしいね」と笑いながら、部活のことや趣味のこと。
 特に僕は音楽のことを懸命に話したんです。
 彼女が「バッハは皆同じ曲に聞こえる」と言ったので。
 後で知ったのだけれど、彼女は苦手なコーヒーを頼んで「私、やっぱり苦いのダメ」って言おうとしていたらしい。
 緊張をほぐすための材料にするつもりだったんです。
 つまりふたりとも飲めないものを無理して飲んでいたってこと。
 分かり合うために過ごす時間を、お互いが張り合うために消費するなんて。
 こんなのでうまく行くわけないよね。
 つまらない背伸びで最初から知り合う機会を棄ててしまっていたんです。

 ダメだ。ダメです。
 笑いようがないですね。
 嗤えるのは僕の愚かしさだけです。
 今日はなにを書いても自分が嫌いになります。
 ごめんなさい。
 出直してきます。

 明日から気温が一気に夏日に近づくようです。
 体調をくずさないように気を付けてください。

 それでは、また。





 
 

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No title

あらがえない潮流と自分の選択。
思いもよらないところまで流されていくのが人生なのですかね。
良くも悪くも、知りもしない、考えもしない、想像さえもしなかったようなところへ、気づくと流されているのですね。
それに身をあずけるのも、よし。
それに逆らい、あらがい続けるのもまたよし、ですかね。
考えさせられます。

高1の少年とは思えないするどい感性ひかる良い詩ですね。
皮膚やぶるガラスの破片のように輝いて見えます。

偕誠 様

 自分にとって幸運な結果を得た選択が必ずしも正しかったとは言えませんし、自分にとって不運な選択が全体にとって正しいものであるということもあるはずです。
 何をどうすれば良かったのかは結果論からしか検証できませんが、連鎖が生んだ結末を僕は運命と呼びたくはないのです。
 全ては始まりの意思であったと思いたがっているのかもしれません。それが詭弁であっても。

> 高1の少年とは思えないするどい感性ひかる良い詩ですね。
> 皮膚やぶるガラスの破片のように輝いて見えます。

 お褒めいただくようなものではないです。恐縮してしまいます。
 恐らく書いた時、僕に特別な意識はなかったのだと思います。
 何となく意味ありげな文章を教科書の端っこに落書きし、友人が作っていた同人誌にちょっと載せた程度。
 でも何となく現在まで引きずってきてしまっているんです。
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