別府葉子 in ルーテル市ヶ谷

 D-Minor (Dm)というコードはAmほど暗くなく、Emのような重さもない、どこか透明感がある響きの良いコードだなと思うんです。
 歌には歌い手の音域とは関係なく、その歌にあったコードというのがある気がします。その響きとメロディとがきちんと出逢うと心に届く名曲が生まれてきます。
 たとえば、複数の歌手が競作した場合、同じ曲をそれぞれが異なるキーで歌うわけです。そのなかで「この人のが好き」というのがあります。それがある意味で「歌に合ったコード」ではないかと思うのです。
 他にも、J・S・バッハのオリジナルの曲をハ長調からト長調へ移調してみたらしっくりときた、なんていうのもクラシックの世界では良くあることです。もちろん演奏する楽器に合わせてです。
 曲が持つ本来の自分だけのコードがある気がしますって言ったら笑われるのでしょうけど、それは作曲者が選び出すのではなく、曲そのものが作曲者に選ばせているのかもしれない。
 その歌の本当のコードを見つけるということは、僕たちが生きるなかにおいて本当の願いや夢をみつけることと変わらない気がします。
 藤沢周平さんが「苦労を重ねることで自分の人生が次第に見えてくるんだよ」と話されていたのが思い起こされます。
 試行錯誤して苦労を重ねコードを見つけ出すのは並大抵のことではありません。大多数の人はその努力を飛ばして、自分に扱いやすいものを選び取ってしまいがちですけれど。

 さて、何の話かというと5日に別府葉子さんのコンサートがありまして、その一曲目が「月虹」と言う曲でDmから展開しているんです。
 別府さんの声域からすれば半音下げても、一度上げても影響はないと思いますが、その歌の音がDmから発せられてくる時の美しさと広がりは素晴らしいと改めて思いました。見事にその歌の本来のコードを響かせていました。
 昨年、この歌を始めて聴いたとき、お作りになられて間もなかったとお話をされていました。それから一年という時間が過ぎて歌いこまれてきた成果が如実に感じ取れました。
 感情を微細に表現する余裕といった技術的な面も含めて、伝えるということに関する気持ちの変化が生じてくるのだろうと思います。
 歌詞っていうのは書いた時には自分でも気づかなかったことが歌いこむことで見えてくるというのがあります。
 「ああ、こんな解釈もあったのか」とか、「こういう気持ちも含まれていたのかもしれない」とかです。
 作った時のまま変わらないというのはあり得ないのです。
 作品は時の産物なのです。時の栞と言い換えたほうが良いのかもしれません。
 
 肝心のコンサートですが曲目はシャンソンがもちろん多いのですが、その他にジャズ、ボサノバ、J-POP、伝承歌などバラエティに富んでいて飽きさせません。
 しかも第一曲目が、昨年の東京公演で別府ファンの心を捕えた「月虹」です。これを冒頭にもってきて「おおおっ?!」と思わせる演出もすごい。
 聴衆に聴かせるというだけではなく、同じ時間を共有するという相互作用を大切になされているのが伝わってきます。
 それは歌詞にも表れています。馴染みのある曲は原曲通りに、日本語のほうがストーリーが伝わりやすいものやあまり馴染みのないものは日本語詞でといった配慮です。
 高尚な芸術ではなく、身近な作品を生活のなかで楽しむというリラックスした雰囲気そのままに。
 いつも思うのだけれど別府さんは訳詞が上手ですね。原詞を損ねずにストーリーを伝えてきます。僕などは直訳に四苦八苦です。とても意訳に割くゆとりなどありません。

 別府葉子ライブアルバム 別府葉子コンサート(Beppu Yoko office)

 当夜、演奏されたプログラム(二部構成)は次の通りです。

 月虹
 イパネパの娘
 百万本のバラ
 トニオ
 コンドルは飛んで行く
 6月の雨
 マミー・ブルー
 THE ROSE

 首の差で(Instrumental)
 ゲッティンゲン
 ル・モンド・エ・フー(世界は狂ってる)
 クライ・ミー・ア・リバー
 北ウイング
 まぼろしの恋
 愛の讃歌

 アムステルダム(アンコール)
 
 ベーシストの神崎薫さんのクライ・ミー・ア・リヴァーのソロ・ベースランニングも良かったですが、アンコールのアムステルダムのワンコーラス目が終わり、バックスが加わる時の第一音が力強く非常にクールで印象に残りました。「しびれた」という表現はこういう時に使うのでしょう。
 上田さんのピアノ、会田さんのヴァイオリンも艶やかで別府さんの声とよく合っています。
 こういう演奏を聴いていますと「あなたと、夜と、音楽と」をやってくださいとリクエストをしたくなってしまいます。秋の夜の悩ましさに似合っていると思うんですけどね。

 今回の公演には間に合いませんでしたが、近々、Newアルバムが出るそうです。
 どんな曲が選ばれているのか、別府さんのオリジナル曲を含めて楽しみです。



 
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