金井直「予感」

 逝く人の知らせが多くなってきました。
 100まで生きて大往生を遂げた人もいれば、わずか十歳に満たずに世を去った子もいました。
 事故もあれば、病気もありました。
 彼等のひとりひとりに思い入れがあるわけではありませんが、それでも何人かは僕にとって大切な知人であり友人でありました。
 恐らく僕の耳に入らないところでも櫛の歯は毀れ続けているのでしょう。
 そして僕はその透いた櫛の歯の間を埋めるだけの何物をも持たずに、ただ残った櫛の歯を指の先でなぞってみるのです。
 弾かれた櫛先は不揃いのオートハープのような音を立てます。
 じゃれついた遊びのような仕種を繰り返すうちに僕はその毀れた櫛の歯のことを忘れて行きます。
 そうしているうちに隙間は広がるばかりで、果たして櫛の歯を弾くこともできなくなってしまうというのに。

 毀れ落ちた櫛の歯が僕の人生そのものだったと気付くには、僕はまだ終わりを知らなさすぎます。
 いつしか隙間は空虚と名前を変え、空虚となった隙間は無限の大きな口を拡げ続けています。

 僕はこうして空虚を悲観的にしか捕えることはできないのだけれど、それを無に帰すための愛情として捕えた詩人がいました。
 金井直です。
 詩集「青ざめた花」から。

 青ざめた花01 (国文社、昭和50年初版)

 「予感」  金井 直

 一つの入り口がある その内側に「始め」と書かれてある
 一つの出口がある その外側に「終り」と書かれてある
 その間の洞窟のように暗い場所を
 人生と名付ける
 又は 未来とも過去とも呼ぶ
 だが それらをそっくり呑込んでも
 どこへ呑込んだかわからないほどの「空虚」があるとしたら
 そんな途方もない愛情があるとしたらどうしよう

 青ざめた花02 



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