アルフォンス・イノウエの銅版画

 イブリン・ホープのために(部分) イブンリン・ホープのために(部分)

 アルフォンス・イノウエは、マンディアルグの「満潮」、ジョイス・マンスールの「女十態」などの装丁、挿絵を手がけており、その甘美な頽廃は見る者を一瞬で作品世界に誘い込みます。
 僕がこの作家の作品にはじめて出会ったのはそんなに昔のことではありません。
 むしろ最近と言っても良いかもしれません。2000年に奢㶚都館から発刊された「黄昏のウィーン」からですから。
 神戸出身のこの作家は武蔵野美術学校(現、武蔵野美術大学)を出て後、「満潮」の挿絵を手掛ける直前に銅版画の門を開き、独学による試行錯誤と先達であった山本六三との親交を深めその教示を得ることにより、独特の世界観を表現する作風を身に着けました。
 「満潮」は山本六三との出会いがなければ存在しなかったかもしれません。

 鏡の前の天使 1975 鏡の前の天使(1975年)

 アルフォンス・イノウエが繊細な線を以て表現する銅版を選んだのは、そこに内在するストイック性が彼の作風に適合したからなのでしょう。
 細い針で刻む線から生み出された作品は繊細で愛らしく、エロスを湛えながらも極めて禁欲的な印象を与えてくるのはその技法から派生してくるものです。
 そして銅版画に没頭することで、挿絵から蔵書票へと活躍の場を移していったのも必然と言えます。
 それは彼の最初の作品集「Belle Fille」で「(銅版画は)掌の上にのせて愛でるのに適したメディア」であると述べていることからも窺えます。
 確かにエッチングで作成された蔵書票は繊細で美しく、掌上の宝箱と言われるのも頷けます。
 その銅版による細密な小宇宙は、アルフォンス・イノウエの作品において高雅とも言える至上の頽廃美を見せています。

 わたしのマリオネットⅡ1975 私のマリオネットⅡ(1975年)

 彼が扱う題材は広く、古典詩、神話、ハンス・ヴェルメールの影響を覗わせる作品、ハードコア的なものまでありますが、全体としてはゴシック的な香りが漂います。

 彼方を見るスフィンクス 1983 彼方を見るスフィンクス(1983年)

 英国の詩人、ロバート・ブラウニングの「イブリン・ホープ」を題材とした作品には次のような詩文自体が刻み込まれています。

  イブリン・ホープのために 1985 イブリン・ホープのために(1985年)

…美しきイブリン・ホープは逝った!十六歳と言う若さで!
 恐らく私の名など耳にすることもなく。
 しかし、その時はやってくる。ついにやってくるのだ。
 イブリン・ホープよ、その身も魂も純粋で、輝くようなあなたが、長い歳月をこの下界で過ごしていたのは何故なのか。
 何故、あなたの髪は琥珀色をしており、何故、その唇はあなたが摘み取ったゼラニウムの花弁のように紅いのか。
 この古びた命を棄てて、神秘的な新しき命を得る時、あなたは私にどのように触れてくれるのだろう、罰として。…

 森の記憶 1994 森の記憶(1994年)

 蔵書票

 石の記憶 1991 石の記憶(部分) 石の記憶(1991年)

 内気な恋人 1992 内気な恋人(或いは「誘惑」、1992年)

 ウンディーネⅡ 1993 ウンディーネ(1993年)

 たわむれⅠ 1994 たわむれ(1994年)

 私のものよ 私のものよ(「メメント・ヴィー」より)・製作年不明

 書籍の挿絵はまた後に譲り、今回は銅版画として刷られた作品をご紹介しました。
 
  アルフォンス・イノウエ




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