2枚の絵…はるみるく&さいとうかこみ

 2枚の絵をご紹介します。
 これは先だってのブログのなかで取り上げた、はるみるくさんとさいとうかこみさんの絵です。
 作品タイトルはついていません。
 各々に短歌が添えられているのみで、見る側がそれをどうとらえるかで印象が違ってくると思います。

 はるみるく「君水金地火木」 はるみるく

 オイルパステルで描かれたこの絵は、田中ましろ「かたすみさがし」のために描かれた挿絵です。
 高校生の男の子と女の子が学校生活の日常に隔てられて斜め上下に立っています。
 ふたりの視線は互いを意識するように、また何気ない素振りで通り過ぎるように描かれています。
 添えられた短歌が男の子の微妙な気持ちを伝えます。

…君水金地火木土天海冥僕くらい 離れて廻る教室  田中ましろ  …

 水星から冥王星までの距離は約5,855,610,000Kmです。
 では「君」と「僕」との距離はどれくらい?
 同じ教室、クラスメイトとはいえ片思いの距離は相対性理論や量子論をもってしても縮めることはできません。
 ふたりの距離を縮めるのは0と1では計算し尽くせない、偶然を装うようにそこにあるタイミングとフィーリングです。
 近くて遠い片恋。
 それは愛であるはずはなく、恋と呼ぶには近すぎるもっと曖昧な憧れみたいなものなのでしょう。
 そのもどかしさ、その痛みが愛しいと思える時期があります。
 E=MC2と書くだけで、心が、恋が、光速を越えたらいいのに、なんて夢を見ることのできた時間です。
 
 さいとうかこみ「白鳥は」 さいとうかこみ

…白鳥はかなしからずや空の青 海のあをにも染まずただよふ  若山牧水  …

 浜昼顔でしょうか?咲いているのは。
 明るい夏の日差しに包まれた海岸を行く少女は、空を舞う鴎、或いは、海猫に目をとめて立ち止まります。
 牧水の歌は少女の鞄のなかに入っている文庫本にあるのかもしれません。
 少し離れて堤防につかまっている男の子は何をみているのでしょう。
 海の色なのか、はるか先の水平線なのか、それとも、少女と同じく鳥をみているのでしょうか?
 ふたりはまだ出逢っていませんし、出逢うことはないのかもしれません。
 今はそれぞれが別々の感情を抱えて海をみているのでしょう。
 何となく切なさを感じる一瞬です。

 2枚の絵はどちらも高校生らしい恋を予感させています。
 この絵をながめていると「初恋は実らない」という定番のフレーズが浮かんできます。
 しかし、それは実らなくてもいいものだと僕は思います(実れば何よりもの幸いですが)。
 むしろ実らないことで僕たちは誰かを好きになると言う感情を大切にすることを覚えるのではないでしょうか。
 初恋は最も清らかな憧憬が描き出した感情で、触れられないということのなかに存在する純粋な恋愛。
 口づけも、愛撫も、肉体の交歓もない孤独な恋愛だけが純粋さを保てるのです。
 純粋過ぎる恋が成就することはありません。
 ですから夢のように終わってしまう。
 恋をすることは、たった一羽で空を飛ぶ鳥のようなものなのです。

 ジャン・ルネ・ユグナンは恋愛の孤独について次のように述べています。

…つねに愛に左右されていること、それこそが私が希望と呼ぶものなのだ。
 降ってくる雨が雪のように優しい。愛するものは決して過ぎ去ってはしまわない。我々の代わりに時間に委ねて忘れてしまうことほど卑劣なことはない。
 孤独の秘密。それは人が決して他人の愛を理解しないということだ。…

 愛の孤独は彼の言う通りなのかもしれません。
 自分だけが抱き続ける恋愛は孤独ではあるけれど悲観すべき状況でもなければ絶望でもない。
 恋愛に悩むことは人が生きるための希望に一番近いとも言えるのです。
 幸福を感じることは単純であるがゆえに極めて難しいものです。
 それは生活のなかにおいて、自分の核心を感じ、直接にそれを受け止められるかということにかかっているのです。
 そのために恋愛は最も身近で不可欠なのものなのです。

 「はるみるくのアトリエ」  http://www.halmilk.com
 「さいとうかこみの作品箱」 http://kakomikann.sakura.ne.jp




  
  
 
 
 
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