あしべゆうほ「テディベア」

 連載初期の設定は良いのだけれどその後の展開が行き詰まってしまい、結果として物語を生かし切れなかった作品というのがあります。
 また作家によってはそうした着地点を見定めるのが不得手というか、物語を自由に広げ過ぎてしまい収束させることができなくなる傾向が顕著なタイプもあります。
 そういった作品は着想が良かっただけに惜しまれますし、リメイクされる機会があればと思うものもあります。
 この「テディベア」も僕にとってはそういった作品のひとつです。

 テディベア01 (秋田書店、昭和54年初版)

 あしべゆうほは、「デイモスの花嫁」や「クリスタル・ドラゴン」など長編連載の代表作を持つ人気作家ですので、名前もしらないという方は少ないでしょう。
 しかし、この作品に限っては残念ながら彼女の代表作とはなっておらず、物語も完結していません。
 全5巻で「完結」とはなっていますが、あまりにも不自然な終わり方で、結果として作者が何を目指していたのかが分らない作品になってしまっています。

 テディベア02

 物語の舞台はオーストリアのチロル地方の小村です。
 そこに財閥の子息であるアーロが訪れ、ヒルデガルドが営むペンションに滞在することからストーリーは始まります。
 この少年、とある事情から母親から疎まれ、静養を口実に片田舎に送られてくるのですが、その理由が「動くテディベア」を友人としているからなのです。
 コメディタッチの描きだしから一転してオカルト的な要素を盛り込み、読み切り形式でペンションを訪れる客や彼の友人、または旅団の人々に小さな奇跡を起こしてみせるのです。
 
 テディベア04 テディベア05
 
 4巻までの出来は良かったと思います。
 チロル地方の気候、風俗、気質などを取り入れながらアーロとその周囲の子供たちの成長を描いていこうとする手法は生き生きとして、作者が言うとおりに「今にも画面を飛び出していきそうなアーロ」を逸脱しないようにストーリーに収めようとする苦心が見え隠れしています。
 しかしイメージを広げ過ぎる主人公というのは長短表裏一体で、物語を良くも支え勢いを与える一方で、以後の成長の兆しとなる変化に伴う展開で物語の主軸をどこにおいていたのかが不明瞭になってしまう危険性があるのです。

 この作品の場合では、アーロが自分の特殊な意思が持つ力を自覚した時に、それが如何に彼を(或いは母親を)苦しめ、かつ、以後の彼の支えとなる力になって行くのかが描き切れないままになってしまってます。
 アーロの闊達さを生かそうとして学園生活を膨らませることで「テディベア」というきっかけを維持し切れないという結果を生じさせてしまうことになったのです。

 テディベア03

 両親と兄を自動車事故で失い自閉症となった少女ラウラと出会い、アーロがテディの本質について気づき、その自覚を通して少女に手を差し伸べようとするところで第一部が終ります。
 第二部では時間を一気に走らせてしまい、成長したアーロがイギリスの名門校イートンに寄宿するところからはじまります。
 学園生活が中心となる第二部では、登場人物も増え、その関係も複雑化していきます。
 しかし、アーロのお目付け役であり最大の庇護者であったエドの死やその生活への変化を生じさせた(恐らく物語上肝要なものとして置かれた)いくつかの事件の伏線をひいたまま回収できずに終わってしまいました。

 前半はアーロの特殊性に主眼が置かれた小さな奇跡の物語として展開し、後半をアーロを取り巻く恋愛と学園の物語とに切り分けてしまったのがこの作品を台無しにしてしまったとも言えます。
 第一部の終りでラウラに小さなテディを分け与えてしまうことでアーロの呪縛を取り除き、以後は普通の少年として描きたかったという意図もあったのでしょう。
 しかし初期設定を保ちながらアーロの内面の葛藤と成長を当初のまま描き続けていたのなら、冒頭にあげた代表作に並ぶものになっていたかもしれません。

 テディベア06




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更新楽しみにしています。

返事が遅くなり申し訳ありませんでした。

ご返事が遅れましたことお詫び申し上げます。
ここ最近、体調が優れないのと多忙なため更新が出来ずにいます。
けれど事情はどうあれブログを続けて行く姿勢は持ち続けたいと思っています。

>更新楽しみにしています。

とても嬉しいお言葉です。
お一人でもそう言って下さる方がいれば、心が完全に折れるまで僕は書き続けて行かれるだろうと思います。
有難うございます。

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