トマト汁粉と蜻蛉集

 トマト汁粉と蜻蛉集というタイトルをつけて書出しましたが、両者にまったく関係はありません。
 ただ単に今日のできごとのなかで「居合わせた」程度のことです。

 かつて「sola」というアニメがありまして、久弥直樹が原作、七尾奈留がキャラクターデザインをし、2007年に放映された作品です。
 阿倍野ちゃこが電撃大王でコミカライズしたり、その他ドラマCDなども制作され、昨年にはブルーレイボックスが発売されてもいます。
 そのアニメの作中に「フォアグラおにぎり」「キャビアおにぎり」などの変わり種の食べ物がでてきます。まあ、この2つについては特別変わってもいませんが。
 鴨のフォアグラはご飯によく合います。塩と胡椒でソテーしてマデラソースか、リッチな方はそれにトリュフの微塵切りを加えてペリグーソースにでもして、ご飯のおかずとして召しあがってみてください。パンよりずっと食が進みます。
 キャビアはイクラやトビッコをおにぎりにもしますから似たようなものです。
 で、さらに作中に「トマト汁粉」なるものが登場します。
 この「トマト汁粉」とはいかなるものなのか?
 ブルーレイ発売時にイベントとして「茉莉の好物“トマトしるこ”づくりにスタジオで生挑戦」というのがありましたが、それとは別に独自の「トマト汁粉」を作ってみました。

 材料は、さらし餡、ギンナン、ドライトマトです。
 さらし餡を温めながら水に溶いてお汁粉のベースを作ります。そこへ適量のギンナン(種ごと封筒か小さな紙袋に包んで電子レンジで1分20秒ほど温めると簡単です)とドライトマトをお好みの量を入れて、すこし煮るだけでおしまい。
 調理時間、約10分で出来上がりです。完成品は下の写真。

 トマトしるこ トマト汁粉

 そこそこ食べられます。お試しあれ。

 で、お汁粉を食べていると、なんとなーく泉鏡花が浮かんでくるんですよ。
 別に鏡花が甘味好きだったとか、お汁粉が好物だったわけではありません。
 借金取りから逃げて大阪へ行き、そこで世話になっている友人に誘われてぜんざぃを食べにいくくらいですから嫌いではなかっただろうけれど、それ以上のことは話題としては残っていないようです。
 とにかく鏡花自身のエピソードとは無関係に、僕のなかでは結びついてしまうんです。これは感性の問題なのでどうしようもないですね、たぶん。
 さて、ではなぜ「蜻蛉集」へ連想が及ぶのかと言いますと、これにも特別な理由はありません。
 恐らく見返しの木版画の謡童子が、どこかの甘味屋の襖か、衝立にでも描かれているような気がするからなのでしょう。

 蜻蛉集02 見返し

 ですが、僕がこの「蜻蛉集」を気に入っている理由はきちんとあります。

 鏡花は雅文で小説を仕立てています。
 物語そのものに魅力があるのは当然ですが、彼が操る言葉のリズム感や独特のルビがそれをより生かしていると思います。
 美文を操る彼の作品のなかでも「妖剣紀聞」の前篇結びの部分は特に美しいと思います(文章というのは人によって好き嫌いはありますから、あくまでも僕が「美しい」と思っているだけで、他の方からすれば「なんだこれ?」となることもあるでしょうけれど)。

 僕が初めて鏡花を読んだのは「龍潭譚」ですが、それ以後、漁るように彼の作品を読みふけった中で、「妖剣紀聞」の次の文章は本当に心を動かされました。

…唯(と)見ると、すらすらと、なぞへの水を流れて來た、杜若の花が、はつと爪立つ、お町の足許を辷(すべ)つて、花を裏返しに翻ると思ふと、瀬を潜り状(ざま)に其の水車に掛つて、くるりとひとつ廻りました。…

 花の流れるさまが目に浮かぶ文章です。
 鏡花のような作品を書くのではなく、彼の表現を真似をするのでもなく、自分ひとりでこんな文章がかけたらなぁと幾度嘆息したことでしょう・・・。

 蜻蛉集03 

 そして、前篇の最終節。
 
…此の日、椿八幡の大銀杏の高い梢に、夕鴉が胡麻を撒いたやうに、バッと騒いで、日は早稲田の森に沈むだ、黄昏時のことであります。
 崖添の垢離場の土手に、朦朧と立った婦(おんな)が一人、帯を手繰つて弱腰をすらりと脱ぐと、捌けて曳いた裳(もすそ)とともに、撫肩をするりと落す。其處に色の燃ゆるやうな姿が見えたが、其も瀬の影に奪はれると、ただ引結ふたは腰ばかり、眞白な雪の膚が、角ぐむ蘆に膝から消えて、水に次第に沈む胸に、杜若の花を抱いて居て、ふつくりと乳の裏すく流の、やがて、それも沈みました。七日月の廣刃の鎌が閃いて、搔切つたやうに、痛々しくも首ばかり、頬にあてた花も黒髪の鬢はかくれて、瀧が音なく、姿見を並べて掛けると、人を捕る魔の大鉛鉢(おおすりばち)小鉛鉢が、ざつざつと鳴るのでありました。…

 鏡花はロマンティストだったんだと改めて思わせられる一節です。 
 
 文章と言うのはすべてを詩的な文章で綴る必要はないのです。キラッとした一瞬の閃きのようなものがどこかに潜んでいればいいのです。
 鏡花はそれが巧い。
 機会がありましたらお読みになってみてください。

 蜻蛉集01 

 それから、この作品も素晴らしいのですが、先に挙げた「龍潭譚」はぜひ一読していただきたいです。
 「高野聖」などと比べると作品として未完成な部分もありますが、躑躅(つつじ)の山に迷う様子や龍の姫に抱かれた男の子の描写は素晴らしく、特に物語の結びの一文はきっと心に残ると思います。
 

 最後になりましたがクリマスのご挨拶を。

 Happy Christmas !

 良い一日をお過ごしください。 
 
 


 
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