閑話休題…署名本のこと

 僕は手元に自分の資料がないものは画像として極力引用しないことにしています。
 そうした中でブログを書いていてよく訊かれるのが本の署名のことです。
 「あれはどこからか画像をもってきてるの?」とか、「どうやって集めたの?」とか、或いは、「贋物と本物をどうやってみわけるの?」などです。

 本の署名について他から画像を引用することはありません。すべて僕がもっているものからご紹介しています。
 どうやって集めたのか?ですが、物故作家の署名を集めるのは難しいものがありますが、現在活躍されている作家のものであればそう難しくはありません。
 新刊発売日に大きな書店に行きますと、出版社から割り当てられたサイン本が並べられていることもありますし、作家のサイン会なども頻繁に行われています。また、サイン会に行かれなくとも、その翌日に行くと、余分にサインを入れたものが出ていることも多いです。

 僕が持っている物故作家の署名本は、以前に書いた「不思議な少女」の御祖父様から譲り受けたものが多いです。
 御祖父様ご自身が文学者で歌人であったことから様々な作家と交流があり、それらを経由して収集されたものを縁あって一部を譲り受けました。
 新しいものについては僕自身でサインを頂いたものや、送られてきたものが多いです。あとは先に書いた通り、立ち寄った書店で偶然に購入したものです。

 本物と贋物の見分け方ですが、本物を手に入れておくのが一番です。当たり前ですけど。
 今回、このブログを書くにあたって「サイン本」「署名本」「サイン、イラスト、直筆」などでヤフオクの検索をかけて眺めていましたが、やはり怪しそうなものがありました。
 見ていると微妙に違うんです。文字のバランスに違和感があるというんでしょうか。ですので細部まで字体を確認することがやはり大切だなと思います。

 署名は年代、筆記具によってスタイルが変わることがありますが、癖というのが全く別物に変わることはありません。筆の入り方とか、払い方とか、流れとかを注意することです。
 それから「落款があるから本物」という話を聞くことがありますが、落款が必ずしも真筆を証明するものではありません。いくらでも偽造できますから。署名の形と落款の関係を年代別にを整理しておくのも重要です。

 そこで最初の一冊の手に入れ方ですけど、まず書店でサイン本として販売されているものは信用しても良いようです。同じように「署名入り限定本」などもまず本物です。
 物故作家の署名については、なるべく真筆と思われる字体を確認しておくことをお勧めします。信用のおける古書店の目録など役に立ちます。
 少し高価ですが署名入り限定本を手に入れてみるのも良いでしょう。川端康成「定本雪国」、三島由紀夫「岬にての物語」(特装限定版)、石川達三「蒼氓」(特装限定版)など割と手に入れやすいです。

 献呈と識語についてもちょっとだけお話をしておきますと、献呈は文字通り相手に贈呈されたもので、○○様、○○兄(姉)と相手の氏名が書かれているものです。
 識語とは本来、その由来を書きとめたものを指しています。つまり「九段会館で行われた上梓祝賀会にて」とか、「○○書店、サイン会にて」とか言ったものです。
 ただし現在は署名の肩に乗せられた添え書きを含めて識語というのが一般になっています。
 遠藤周作先生は「教正」、辺見庸さんですと「潜思」、京極夏彦さんだと「怪」とか「河童」とかその小説に因んだ言葉を選んでいるようです。
 但し、これらが備わっているから本物ということでもありません。作るほうはこんなことは百も承知のはずですから。
 ですのでやはり真筆を知ることにつきるのではないかと思います(すみません、当たり前のことしか言えなくて・・・)。
 
 献呈で思い出しましたが、随分と前のこと、ある古書店で太宰治の署名本というのを見せていただきました。一冊は真筆で、もう一冊は贋物です。
 どこが違っていたかといいますと、贋物は「桜桃」(実業之日本社)の初版で、献呈名があり「織田作之助様」となっておりました。
 古書店のご主人は「面白いでしょう?」とにやにやしていました。
 「これはあるコレクターがまとめて売りに来たものなんですけど、いやあ、これが一番味がありましたね」と。
 確かに面白いです。
 「桜桃」の初版が出されたのは1948年(昭和23年)ですけど、初版の序にあるように「太宰治の遺作として」」出版されたものです。
 さらに献呈された「織田作之助」ですが、彼は1947年(昭和22年)に亡くなっております。
 ありえない署名本です。
 天国からFAXでメッセージが送られてきたと真顔でコメントした団体もかつてありましたから、そういうことも起こりえないとは言えませんが、常識的には考えられないですよね。
 まあ、これは極端にわかりやすい例ですが、初版の発行年、出版社、同時代の交流などについても知っておいたほうが良いと思います。

 でも、署名本って古書的にはそれほどプレミアがつくものではないんです。極一部を除いては、買い取りをしてもらう場合にもほとんど考慮されないことが多いです。それでも多少は上乗せをしてくれますが、期待しているほどには高値はつきません。

 署名本って、文字を見て作家を偲ぶとか、作品の世界により深く入り込むとか、そういった自己満足の域を決してでるものではないんですよ。
 ですから手に入れた一冊の真贋を問うよりも、署名があることで心が充実するというのであれば、それで良いのだと思います。大切なのは思い入れです。
 ですから、あまり高値で競り落としたりしないようにご注意ください。オークションって熱くなるとクリック一つで限界を見誤ってしまうものですから。

 いずれにしても価値があるのは内容であって、それ以外は単なるオプションなんです。専門の研究家やコレクターを除けば、さして拘るものではないと僕は思っています。
 
 
 
スポンサーサイト

テーマ : ひとりごと…雑記…きままに
ジャンル : 日記

コメントの投稿

非公開コメント

sidetitleプロフィールsidetitle

otosimono

Author:otosimono
全く役に立たない独り言です。

sidetitle最新記事sidetitle
sidetitle最新コメントsidetitle
sidetitle最新トラックバックsidetitle
sidetitle月別アーカイブsidetitle
sidetitleカテゴリsidetitle
sidetitleFC2カウンターsidetitle
sidetitleカレンダーsidetitle
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
sidetitle検索フォームsidetitle
sidetitleRSSリンクの表示sidetitle
sidetitleリンクsidetitle
sidetitleブロとも申請フォームsidetitle

この人とブロともになる

sidetitleQRコードsidetitle
QR