スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

小竹清彦「おやすみブラックバード」

 Blackbird singing in the dead of night
 Take these broken wings and learn to fly
 All your life
 You were only waiting for this moment to arise

 この本を手にとった時、反射的に頭に浮かんできたのはビートルズのナンバー"Blackbird"でした。
 この曲はポール・マッカートニーの手によるもので、アルバム「ザ・ビートルズ」に収録されています。
 黒人女性の解放を意味したものであると彼自身は後に述べているようですが、僕はその記事を読んだことがありません。

 "Blackbird"とは周知の通り、和名「黒ツグミ」のことを指し、イギリスではナーサリーライムにも歌われ、様々な小説や絵画にも引用されている馴染みの深い鳥。
 黒ツグミ自体がイコノロジー的にも「死の象徴」或いは「賞賛」を示すと言われ興味深いものがあり、更には「6ペンスの歌を歌おう」ではヘンリー八世の意に随わず火刑に処せられた僧侶を示すとか、アルファベットの譬えであるとか、悪行の暴露を示しているなどと言われています。

 ツグミは囀る時に首を伸ばす様にすることから歌鳥とも呼ばれています。
 厳密にはイギリスの"Blackbird"は、日本で黒ツグミと呼ばれている種とは体色が異なります。
 ですので、英国種は日本では見ることのできない"Black-Singingbird"(クロウタドリ)とした方が正確かもしれません(極稀に迷い鳥として観測されることはあるようです)。

 おやすみ、ブラックバード01 (幻冬社、2012年8月31日初版)

 さて、小竹清彦著「おやすみブラックバード」のことですが、裏表紙の内容紹介によると「朽ち果てた廃墟の中で彷徨っていた三枝千春は、髪も肌も真っ白な少女を発見した直後、異形の存在に襲われる。女性たちに救われ、扉に押し込まれた千春が目覚めたのは、引っ越した古い雑居ビルの自分の部屋だった。リスルすぎる奇妙な夢を疑問に思いながら、隣人に挨拶にいったそこで、夢に遭遇した千春は・・・。『死』と『謎』と『戦闘』が渦巻く廃墟ワールド登場!!」となっています。

 発行は昨年の夏です。部屋の改装に伴って整理していた時に何気に手にしたものですが、一年以上も忘れられていた本ということになります。
 自分で購入したものでさえツンドク状態なのに、いつの間にかめぐってきた本であればなおさら…です。しかし縁があるからこそページを開いたわけですから読むことにしました。

 …本来、最初に考えるべきことへ彼がようやく思い当たったのは、もう随分と歩いてしまった後だった。
 今、彼の目の前には、白いペンキがあちこち剥げて、錆の浮いた螺旋階段が映っている。階段の向こうに見える黒ずんだコンクリートの壁には、幾つものひびが入っていた。壁のガラス窓は曇りきっていて、外の景色が曖昧な輪郭にしか見えない。窓から射す弱々しい陽光が、空間に舞う埃をうっすらと浮かび上がらせていた。…

 主人公三枝千春は下手ながらもロックをこよなく愛するギター少年(青年)です。就職した現在も会社や労働に関してさしてたる重要な意味も感じず、流されるままに生活のために働いている日常という程度の意識しか持っていません。
 その彼がプランタンビルの303号室に転居してきたことから、奇妙な夢の世界でのバトルに巻き込まれていきます。

 物語の「謎」というにはあまり複雑とは思えない設定なのが惜しまれます。
 序章で「白い少女」と出会い、彼女に話しかけようとする千春。見知らぬ者との遭遇に怯える少女と、その怯えに同調するかのように現れた異形の能力者たち。
 そして、襲われた彼の窮地を救った二人の女性と声のみの男性、彼らが同じビルの三階の住人であったという関連性。
 物語序盤で千春たちが発見する墓碑銘に示された言葉が暗示するものが、以後の展開をある程度予測させてしまう点。
 自殺した画家が登場する時点で「夢世界」の構築の背景が読み取れてしまうことなどが残念です。
 エンターテイメント・ライトノベルですから、このエンディングであればその利点をもっと生かして後出しにしても良かったのではないかと思います。
 また、タイトルに含ませた「ブラックバード」に関して、単に「重要な歌」として扱うのではなく、歌詞の内容を直接的ではないにしても、もう少し生かすことはできたのではないかと思います。せっかく「死によって創造された夢世界」に入り込んでいるのですから。

 このライトノベルが出版当時にどのくらい話題になったのかはわかりませんが、物語の勢いはありますし、感動する場面もうまく配分されています。
 読んで損をする類のライトノベルではありません。面白いと思います。
 それから、ちょっと批判めいて聞こえるかもしれませんが、登場人物紹介のイラストを添える程度にしておいて、本編の挿絵は無い方が良かったかもしれません。
 挿絵がなくても充分に読者の想像力を働かせることのできる力が、この作品にはあります。

 ついでと言っては失礼ですが、音楽について登場人物のひとりである黒澤紀一が的確なことを言っています。このセリフは本編の謎を解くキーにもなっています。

 …上手い下手は問題じゃない。表現者の気持ちってやつを想像し得る要素を持っているかどうかが問題なんだ。…

 上手い演奏が良い演奏とは限りませんし、巧みな絵が人を感動させるわけではありません。黒澤の言ったことは音楽だけではなく、芸術は皆そういう要素を持っているということなのです。

 おやすみ、ブラックバード02 (小竹清彦署名)

 最後に、ビートルズの「ブラックバード」の歌詞をご紹介しておきます。
 
 ブラックバード
 
 真夜中に歌っている黒鶫は
 傷ついた羽で飛び方を習う
 君の人生の全てで
 君はただ目覚めの時を待っていた

 真夜中に歌っている黒鶫は、
 沈んだ目で見ることを学ぶ
 君の人生の全てで
 君は自由になる瞬間をただ待っていた

 夜の闇の中を光に向かって
 黒鶫は飛んでいく
 黒鶫は飛んでいく

 夜の闇の中を光に向かって
 黒鶫は飛んでいく
 黒鶫は飛んでいく

 真夜中に歌っている黒鶫は
 傷ついた羽で飛び方を習う
 君の人生の全てで
 君はただ目覚めの瞬間を待っていた

 歌詞にある"this moment to arise"は、白い少女と彼女を取り巻く世界にどういう意味を持って訪れたのでしょうか?
 それはエンディング以後の読者に任せられています。

 作品中には、この他にも"The Velvet Underground"の"pale Blue Eyes"、"Dinosaur Jr"の"Bug"などが紹介されています。BGMとして流しながら物語を楽しんでみては如何でしょう。




スポンサーサイト

テーマ : ひとりごと…雑記…きままに
ジャンル : 日記

コメントの投稿

非公開コメント

sidetitleプロフィールsidetitle

otosimono

Author:otosimono
全く役に立たない独り言です。

sidetitle最新記事sidetitle
sidetitle最新コメントsidetitle
sidetitle最新トラックバックsidetitle
sidetitle月別アーカイブsidetitle
sidetitleカテゴリsidetitle
sidetitleFC2カウンターsidetitle
sidetitleカレンダーsidetitle
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
sidetitle検索フォームsidetitle
sidetitleRSSリンクの表示sidetitle
sidetitleリンクsidetitle
sidetitleブロとも申請フォームsidetitle

この人とブロともになる

sidetitleQRコードsidetitle
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。