"Halcion" の夢

 いつからだか忘れたけれど、もう随分昔から寝ずに朝を迎えることが多くなっている。
 医者から睡眠障害だといわれてハルシオンを処方された。
 けれどそれらは壜底に落ちて行く澱のように机の引き出しの中に蓄積されていく。

 ハルシオンを飲んだ日は夢を見ない。
 あれを飲んで自然に目覚めた朝は夢を見た記憶があまりない。
 目が覚める直前の夢以外、覚えていない。
 一度目覚めてから再び眠りについたあとの夢は思い出すことができる。

 そんな簡単なことに、ある日突然気が付いた。

 医者にそう話してみたところ、彼はモニターから目を逸らさずに事務的にこう答えた。

 「脳というものはね、夢を見てから8~10分ほどしかその夢を覚えていられないんですよ。ですから、夢を見てすぐに目覚めた時は割と鮮明に思い出すことができるんです。しかし、ハルシオンはね、その記憶の部分に働きかけて、知覚させないようにしてしまうんです。つまり覚えていられないようにしてしまうんです。記憶を欠落させて眠りの状態へ誘うのがハルシオンなんですよ。ですから神経症、欝病、心身症からくる不眠症には効果があるんです。」
 
 ハルシオンの青は空の色でも、水の色でもない。
 もっとくすんだ灰青色。

 もし"oblivious"という言葉を色で表すとしたならハルシオンの色は相応しいかもしれない。

 覚えていられない。
 或いは、気づかない。

 春紫苑

 こう漢字で示せばまったく別のものになるのに。

 でも、やはり同じか。
 あの花たちは目についても関心を払われることが少ない。雑草だから。
 かつては園芸品種としてもてはやされたこともあるのに。

 覚えられていない。
 気づかれていない。

 どちらも「視線」に戻ってくる。

 "perspective"

 欠けている僕には "Halcion" は似つかわしいのだろう。

 超短期作用型ベンゾジアゼピン系薬物。

 夢は覚えているべきではない。

 忘れっぽいのを薬のせいにして、それをいつか自慢にできる日が来ることを祈って。

 おはようございます。

 朝です。

 
 


 

 
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