J.L.Scott " WILD FLOWER CHILDREN " ‐ 20世紀初頭の挿絵 ‐

 現在、名前を憶えている人がどれくらいいるかはわかりませんが、ジャネット・ローラ・スコットはアール・デコを代表する挿絵画家のひとりでした。

 HAPPY ALL DAY THROUGH HAPPY ALL DAY THROUGH,01
 "HAPPY ALL DAY THROUGH"(Chicago Volland,1917)
 
 ジャネットは、ドイツ移民であるポール・フレデリック・ヴォーランドが1908年に創設したヴォーランド社に見いだされ、そこで挿絵を手掛ける一方で日本の浮世絵に出会い、強烈なデフォルメを施したジャポニズムの影響を受けました。
 構図的にはさほど斬新さは感じられませんが、多彩な花をモチーフとした妖精や小さな動物、こどもたちの姿は流麗でわかりやすい線で描かれています。それらに水彩を施した柔らかな画調は、晩年のジェシー・キングやアンリエット・ウィルビーク・ルメールを彷彿させるものがあります。
 そのわかりやすい画風を生かしてジャネットが手がけた挿絵の多くは大衆向けの児童書や「CHILD LIFE」のような子供向けの雑誌でした。

 childlife[1935] "CHILD LIFE"表紙(RAND M'NAILY&Co,1935))

 今回はエリザベス・ゴードンの詩画集「 WILD FLOWER CHILDREN 」を取り上げようと思います。

< Janet Laura Scott " WILD FLOWER CHILDREN " >

 WILD FLOWER CHILDREN [1918] 表紙(P.F.VollandCompany,CHICAGO,1918))

 初版は1918年、アメリカの P.F.Volland Company から発行されています。
 エリザベス・ゴードンの詩に合わせて83頁のすべてにカラーの挿絵が描かれ、表紙と見返しは多色刷り石版になっています。
 もとはオリジナルの函がついていましたが破損しやすく、今となっては函付きの完本を見つけるのはかなり困難で高価でもあります。
 
 WILD FLOWER CHILDREN [表見返し] WILD FLOWER CHILDREN [裏見返し] 表&裏見返し 

 エリザベス・ゴードンが野の花をモチーフとして作った詩に合わせて、ジャネットがその花を擬人化(妖精化)する形式で1ページ完結になっています。絵本として、こどもがどこから読んでも良いように作られています。

 WILD FLOWER CHILDREN [Pub] WILD FLOWER CHILDREN [扉&HEPATICA] 扉&HEPATICA

 パブリッシャー、扉絵のあとに、ここでは割愛しますがエリザベスの序がおかれていて、季節順に草花が紹介されて行きます。
 最初に登場する花は春一番乗りで咲く“HEPATICA”です。括弧書きで別の名称が付されていて“Hepatica Triloba”となっています。これは雪割草(Hepatica nobilis)のことです。

 「雪割草は朗らかで一番乗り、絶対に遅刻したりしないし、ちっとも不機嫌な顔もしないで、濃いライラックのドレスを着てやってくるの。そして、わたしたちに喜びと幸せを運んでくるのよ。」

 WILD FLOWER CHILDREN [トキワナズナ] INNOCENCE&PASQUE FLOWER

 「可愛いトキワナズナは早春にしずかにやってきます。菫色の上品な色合いにつつまれた甘い香りのする布をまとい、可愛いらしい憧れと一緒にやってくるのです。」

 “INNOCENCE”はトキワナズナのこと。ナズナとついていますがアブラナ科ではなく、アカネ科の植物です。日本では、別名を雛草とも言います。ちょうどひな祭りの頃に咲くことからついているのでしょう。学名を“Houstnia Caerulea"と言いますが Houstnia は植物学者・William Houstnへの献呈名、Caeruleaは「青色をした」という意味です。

 「セイヨウオキナグサは穏やかな日を待ったりはしないのです。コマドリが歌いだす前に、体を小さくこごめながら、毛皮に身を包んで咲いているのです。」

 “PASQUE FLOWER”はセイヨウオキナグサ、復活祭のころ紫色の花をつけるキンポウゲ科の花。花言葉は「何も求めない、清純な心、告げられぬ恋 」です。

 WILD FLOWER CHILDREN [露草] DAY FLOWE&BLUE SPRING DAISY

 「露草の服は、たった一日しかもたない青い服です。きっと露草のママはお洋服をつくるので大わらわです。」

 “Day Flower”は露草です。英名は、一日で花が萎れてしまうことからとられています。露草を乾燥させたものは「鴨跖草」(おうせきそう)と呼ばれ、下痢止め、解熱に使われます。わが国では、藍花、月草、蛍草などの別名を持っており、せがわ真子「花詩集」でもあったように染め物の下絵を描くための染料として用いられました。

 ムカシヨモギは言うの。
 「あんまり早く咲くと、私のフリルのついたラベンダー色のガウンでは寒すぎて凍えちゃう。だから5月か、6月になるまでじっと待ってるのよ。」

 “BLUE SPRING DAISY”はムカシヨモギというと馴染みのない気がしますがハルジョオンの仲間です。ハルジョオンと言えば「あの花か」と思い当たるでしょう。北米原産で大正時代に日本に渡来した外来植物。乾燥させてお茶にして飲めば、糖尿病の予防やむくみをとる薬にもなります。

 " WILD FLOWER CHILDREN "は、和書では出版されていませんが、洋書であれば2001年にDerrydale社から復刻版がでています。Amazonでも買うことができますし、洋書を扱っている書店でも手にいれることができます。

 WILD FLOWER CHILDREN [Derrydale] (Derrydale社、2001年)




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