昨日、高橋真琴先生の個展「薔薇のワルツ」を拝観してきました。
仕事を少し早めに切り上げて18時からのパーティに間に合うように出かけたのですが、実を言えば、ご招待状にあった期日を勘違いしていていました(土曜日だと思いこんでいたのです)。昨日であったことに気付いたのが当日の午後2時ころでして、急いで仕事に目途をつけて準備をしました。

向かっている途中、夕立になり「着くまでには止んでくれれば良い」と思いながら電車の窓に流れる景色を見ていました。
銀座に着くころには既に雨もあがり、少し寄り道をしてからギャラリー向日葵へと向かいました。
会場内には1967年に描かれた「愛の交響曲」から新作まで50点以上に及ぶ作品が展示されており、昨年以上の気魄が感じられました。
会場に入った時、先生は中央のテーブルで椅子にお座りになったままうたた寝をしていらっしゃいました。一度だけそっとお声をおかけしたのですがお気づきになられなかっため、お起こしするのも憚られる気がしたので展示作品を拝見してからと傍を離れました。
けれども、すぐに会場の方が先生にお声をかけてくださり、お疲れのところ恐縮にもお話をさせていただきましたが、あれほどまでに疲労の見えるお姿を拝見したのは初めてかもしれません。
会場には多くの花束と先生が描かれた可憐な星の瞳の少女があふれ、会場内のどこにいてもその瞳にみつめられる幸福を感じることを禁じえません。しかし、いつも先生の傍らにおられた奥様の姿はそこにはお見受けすることは叶いませんでした。昨年12月24日にご逝去されたのです。外部に知らせることはせず、すべてをお身内でなされたそうです。先に他からお聞きしてはいましたが、先生ご自身で公式に言い出されるまで書くべきではないと思い、ここにも書かずにおきました。
先生のご心中は僕のような者が察するに能うべくもなく、その深い悲しみにお声すらかけることもできません。「これが家内の望みでもありましょうから、負けるものかと絵を描き続けました」と微笑まれるお顔を拝見したら、述べようと思っていたお悔みのひとつも言葉になりませんでした。ただ初めて奥様にお会いした日のことを短くお話させていただきました。
「来年は画業60周年。その次の年には80歳になります。まだまだすべきことはたくさんあります。」
パーティでこうおっしゃった先生のお言葉が今日ほど胸に響いたことはありません。その決意はご自身の夢と、それから奥様への愛とに支えられていると、そう感じました。
「佐倉フラワーフェスタ」 パーティ前に先生が次のようにおっしゃられました。
「昨年の個展から40点以上を描きました。本音をいえば、展覧会はできないかもしれないと、そう思ってもいました。けれどもどんなことがあっても僕はしょげてはいられない。負けてなるものかと必死で描きました。それが家内を喜ばすことになるとね。それでもあと6つほど描きあげられなかったものがあります。それは次の東京の個展のためのものにするか、関西に展示するかはわかりません。その会場ごとのテーマがありますから。昨年はいろいろなことがありました。あったからこそ描かずにはいられなかった気持ちがあります。」
高橋先生はまたいつものように東京会場には毎日お見えになり、多くのファンの方々をご自身でお迎えになります。そのお心がまさに星の瞳そのものだと思うのは僕だけではないでしょう。
あのまだ早い春の日、ギャラリーの裏口までお見送りにきてくださり「また来てください。いつでもお待ちしております」と温かな笑顔を満面にうかべられた奥様を、昨年の個展の時に会場入り口にいた僕を見つけて声をかけてくださったあのお気遣いを、僕はきっと忘れないでしょう。
会場に展示されていた「シューベルトの子守歌」に描かれた母親の姿を見つめていて、この溢れる愛情は奥様のお心なのかもしれないとそう思いました。
奥様にはそれほど多くお会いする機会がありませんでしたが、そのお気持ちにはいつも感謝いたしておりました。またお会いする日もあるかと思います。その時には改めてお礼を言わせてください。今はごゆっくりお休みください。お疲れ様でした。
- 合掌 -
「ツィゴイネルワイゼン」 ★「薔薇のワルツ」
会期:2012年5月29日~6月9日(土)
11:00 ~ 18:30
会場:銀座 ギャラリー向日葵 (銀座松坂屋近く)
東京都中央区銀座5-9-13 銀座菊正ビル2F
TEL 03-3572-0830
★「フルーツ・バスケット」
会期:2012年11月2日~11月18日(日)
11:00~18:00(最終日は17:00)
会場:ギャラリー 小さい芽
兵庫県西宮市千歳町6-20
TEL 0798-33-3345
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