不器用でも、頑張るほうがいい

 開口一番に「P.A.Works 」と言って、すぐにわかる人はアニメ通の方のみでしょう。
 少し説明させていただきますと、P.A.Works 代表の堀川憲司さんは、スタジオ・ルック、竜の子プロ、ProductionIGの作品制作に加わり、1997年に真下耕一さん(竜の子プロ出身)とビィートレイン(ツバサ・クロニクル、エル・カザドなどを制作)を設立。その後、2000年に越中動画本舗株式会社(現、P.A.Works)を設立して、現在まで良質のアニメを送り出しています。
 P.A.Works の主な参加作品は、鋼の錬金術師、スクラップド・プリンセス、攻殻機動隊など。シンエイ動画、ProductionIG、ボンズからのグロス請けが多いです。元請けでは、Angel Beats、CANAAN、true tearsです。

 で、何の話をするかと言うと、TokyoMXなどで今年4月3日から放映が開始されている、そのP.A.Worksの初の完全オリジナル・アニメ「花咲くいろは」の話です。既に第9話まで放映されております。

 ストーリーは「いいかげんな母親の思いつきで、東京から遠く石川に引っ越すことになった松前緒花。行先は祖母が経営する老舗の温泉旅館『喜翆荘(きっすいそう)』。様々なカルチャーギャップに戸惑いながらも、旅館で働く同世代の女の子や先輩たちと共に、新しい生活に馴染むべく悪戦苦闘を繰り返す緒花たちの日々を描く、温泉青春ストーリー」という風にDVDの宣伝では紹介されています。この説明ではよくわからないですよね。
 ちょっと補足しますと、上記で「母親の思いつき~」とありますが、実際には、母親の夜逃げが原因で、全く面識がない祖母のもとに預けられ、そこで仲居として住込みで働きながら学校に通うことになるわけです。その緒花が、ぱっとしない温泉旅館を盛り上げるために不器用ながらも前向きに努力するという、少女版「細うで繁盛記」(*注)と言ったところでしょうか(かなり古くてごめんなさい)。見ていて小気味好い作品です。

 最近のアニメは、異世界だったり、覚醒したり、時空超越だとか、近未来だったり、戦闘ものだったり、エログロとか、H系萌えとか、そんな作品が多いのですが(それはそれで良いのですけど)、個人的にはそういう種類のアニメに疲れてきました。
 「花咲くいろは」では、そう言った派手な設定はありません(アニメですので、やや奇抜な事件はおこりますけど)。簡単に言ってしまえば、NHK朝の連続テレビ小説みたいなアニメです。
 実写では出来ないアニメならではの美術手法を生かして、非常に丁寧に作られています。伊達に「P.A.Works 設立10周年記念アニメ」と銘がうたれているわけではないですね。
 ごく地味な題材を、メリハリをつけて、本当にうまく処理しています。曖昧な役柄もなく、それぞれのキャラクターが自然に動いています。監督の安藤真裕さん、脚本・シリーズ構成の岡田麿里さんの息があって、充分に力を発揮できている感じです。ストーリー自体はテンポ良く進みますし、強引な伏線の挿入を匂わせたりしないあたりが気持ち良いです。全体の人間関係は、徐々に馴染むという感じで無理なく進行していきます。作画の関口可奈味さんのキャラクターデザインも役柄の性格を良く表現しています。この御三方、「true tears」の時も感じましたけど、こういった精緻な人情もののアニメで、実に自然なコンビネーションでストーリーを組めると言うのは素晴らしいです。浜口史郎さんの音楽も良いですね。単なるSE的な音楽ではなく、登場人物や背景と合わせて浮くことなく場の雰囲気を出しています。音響監督、マジックカプセルの明田川仁さんの音作りや調整も流石です。また、「パプリカ」で絶妙な仕事をしてくださった美術の東地和生さん、ここでもやはり抜群の職人技を見せてくれています。下のスチールカットを見ていただければ背景などの美しさが少しは伝わるかと思います。
 と、製作側ばかりあげておりますけど、肝心の声優さんも素晴らしいです。主人公の伊藤かな恵さんはじめ、本田貴子さん、能登麻美子さん、浜田賢二さん、諏訪部順一さん、豊崎愛生さん等、やはり実力があります。中でも、特筆すべきは、女将役の久保田民絵さんです。1970年代初頭よりTVドラマや映画などで女優としてのキャリアを積んでいらした声優さんです。このアニメにおいてもキャリアが遺憾無く発揮されていて、動きが眼に浮かぶような台詞回しです。
 キャラクターボイスに、きちんとした声優さん(変な言い回しですが)を起用しているアニメって見ていて安心できますし、やはり面白いです。 声って重要なんです。C.Vの話題性、意外性だけでは作品の完成度を高めることはできないんです。

 主人公・緒花をはじめとする不器用な喜翆荘の人々と彼らを中心にして繰り広げられる悲喜交々の人生模様。接客におけるホステピタリティとは何か?誠意を以って接すればこその好意の返礼。相手と向き合う真摯な心。そして、義理。思考も習慣もデジタルに慣れ切った生活の中で、アナログの大切さを教えてくれるアニメです。
 どんなに上手に電子機器を使いこなしても、所詮、人は生身なのです。人間そうそう器用に生きられるものではありません。必死で頑張れば、不器用でもちゃんと伝わることもあるんです。人生、良いことも悪いことも半々。努力はそれなりの幸せを運んでくるものです。元気を出していきましょう。
 この「花咲くいろは」、SFやバトル系アニメなどに食傷気味の方には、さわやかなサプリ的な作品です。

  花咲くいろは「花咲くいろは」

 なんか番組宣伝みたいですみません。

(*注)「細うで繁盛記」
 1970年1月8日から1971年4月1日まで放映されたテレビドラマ(よみうりテレビ製作、日本テレビ系列放送)。大阪生まれの加代が、伊豆・熱川温泉の老舗旅館「山水館」の元に嫁ぎ、旅館を盛り立てていく物語。オープニングの「銭の花の色は清らかに白い。だが蕾は血がにじんだように赤く、その香りは汗の匂いがする」という主人公加代役の新珠三千代のナレーションが印象的でした。原作は、花登筺の「銭の花」。


 
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